REPORT

「ものがたりとものづくり」 第11回 発表

「もの」と「ものがたり」を発表する最終発表会
「ものがたりとものづくり」はプロダクトデザイナーの岩元航大さんが講師を務める全11回のクラス。カリモク家具の木材に触れながら、生徒の皆さんも1人のプロダクトデザイナーとして制作や発表をしていきます。
4月20日(日)の第11回は、GAKUでのアイデアの最終発表会。これまでいくつものデザイン案を試行錯誤してきた生徒のみなさん。講師の岩元さんに加え、カリモク家具から副社長の加藤さんや森川さんも講評者としてお迎えし、半年間の成果を発表していきます。

 





5種類の木材、8種類の作品
漆の木、オーク、ケヤキ、杉、栗の木。5種類の木材それぞれが持つ「ものがたり」と生徒自身の興味関心が重なり合って生まれた、それぞれの8種類のプロダクト。実寸模型と共に、制作プロセスでの工夫も含めて発表されます。

​​【漆の木】
樹液を採取された後に残る漆の木。材として使えるようになりますが、薪としての利用にとどまることがほとんど。カリモク家具では、漆生産組合から原木を購入し現地で製材しています。
・ハニーディッパー:「ハニーディッパー」に加工することで、利用されるたびに再び潤いを取り戻してもらいたいという想いが込められています
・タンブラー:漆という木が、樹液としてだけでなく木材としても人を豊かにしてくれるということを知ってもらいたい。「タンブラー」にすることで毎日の暮らしのなかに取り入れることができます。

【オーク】
東京都西部の山で森の若返りのために伐採されたオーク。
・貯金箱:オークは、世界中の神話にも登場し、人々にインスピレーションを与えてきました。「木言葉」では、独立・不屈の精神といった意味があり、これからの自身の人生のあるべき姿と重ね合わせて制作しました。
・観察キット:一部のオークには「カシノナガキクイムシ」の侵入による小さな穴が見られます。その虫の生態に強く関心を持ち、巣の形状が見やすい「観察キット」を考案。キットのフレームに、実際に「虫食い」された木材を使用することで、リアリティが感じられます。

【ケヤキ】
長年街の人々を見守ってきたものの、倒木の恐れから伐採されたケヤキの街路樹。
・吊り革:街路樹も人と共に歩きたいと考えているのでは」と感じた想いから、人々の安全や安心につながる「吊り革」を制作。「人と共に」というところで、携帯して持ち運びができるそうです。
・巣箱:制作者のペットのトッケイヤモリは30cmを超えることもあるそう。そんなペットの「巣箱」にすることで、ケヤキに変わらず見守り続けてほしいという想いが込められています。

【杉】
その大きさゆえ、加工できる機械や需要が少なく、利用が課題になっている杉の大径木。
・キャンプ用食器:杉の殺菌力に着目。キャンプが好きということから、プラスチック製品に代わる食器を制作しました。

【栗の木】
2018年に胆振(いぶり)東部地震で被害を受けた北海道厚真町の栗の木。
・ホイッスル:地震で被害を受けた地域の木材を災害時に役立つことができる製品へ、という想いからホイッスルを制作しました。

 





これからの時代のものづくり
「プロダクトデザインにより興味を持ったので、今後の進路もそのような道に進みたいと思えた」「普段は建築を学んでいるけど、スケールの違うものづくりに挑戦することで、いつもとは違う発想ができたので、これからもそれを大切にしたい」「プロダクトデザインに挑戦することで、普段の暮らしにより注意を向けるようになった」「ケヤキが人の手によって、本来分布しないはずの地域まで拡がっていることなど、木と人の関係がより気になってきました」と、生徒のみなさんからは、半年にわたるクラスで試行錯誤したこへの手応えや印象に残ったことも語られます。

そんな生徒一人ひとりに対して、講評の言葉が送られます。例えば、「自分の手を動かして確かめること。そこから何かを知る楽しみ。それを学んでほしかった。7名のみなさんには伝わったかなと思います」と、岩元さん。「従来の木材に関する観点では、キクイムシの穴はとてもネガティブ。それをポジティブに、そしてその物語性も取り入れていた発想に、驚きました」と、加藤さん。「一人の生活者や消費者の立場から聞いていても、暮らしのなかに取り入れたいと思えるものばかりでした」と、森川さん。

「作りたいものが先にあり、そこに素材を当て込んでいく手法を少し横においておいて、今ある素材に宿る物語に触れ、プロダクトとして形づくっていく」という、そんなこれからの時代のものづくりのあり方を実践していくための試みでもあったこのクラス。それは、木から触発されるものづくりであると同時に、生徒のみなさんそれぞれの人となりが色濃く感じられるものでもありました。

 


次は、完成品の展示会へ
今回生徒のみなさんが発表した作品。その実寸模型や発表資料をもとに、これからカリモク家具さんによる本制作に入っていきます。それらの完成品は、7月26日(水)より、Karimoku Commons Tokyoでの展示を予定しています。多くの方々に、教育とクリエーションが重なる領域の意味や面白さを感じてもらえたらと思いますし、生徒のみなさんには、プロの手によるものづくりの迫力を改めて感じていただける機会にしていけたらと思います。みなさんのお越しを心よりお待ちしています。

 

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