REPORT

「東京芸術中学(第2期)」 第20回 田中知之さん


「ミュージシャンでありながらリスナーであり続ける」ことの実践
編集者・菅付雅信さんと13人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。10月1日(土)は、プロデューサーでDJ、選曲家の田中知之さんによる2回目の授業です。

田中さんのキャリアを紐解く講義を通して「ミュージシャンでありながらリスナーであり続ける」ご自身のクリエーションへの向き合い方に触れていった初回授業。講義の後には、「選曲家」の仕事である、「一つのテーマに合わせて選曲すること」が生徒の皆さんへの課題として発表されました。一つの音楽が聴き手に対してどのような効果をもたらすのか。今回の授業では、田中さんが日々実践されている「リスナーの立場に立つこと」を意識しながら、生徒の皆さんが選んだ楽曲を発表していきました。




リスナーとしての経験を紐付けた課題発表
今回は選曲と共にそのテーマも生徒の皆さんが自由に設定。「どんな人に?どんなために?どんな音をつける?」そんな田中さんの問いかけを踏まえ、「思い悩む10代が心の整理をする時のための曲」として『I Won’t Let You Go』(BoyWithUke)、「旅行先が雨でも気分をあげるための曲」として『YOI』(SHOW-GO)、「ジェットコースターの中でさらにドキドキするための曲」として『リンダ リンダ』(ザ・ブルーハーツ)など様々なテーマと楽曲が発表されていきます。

「どうしてこのテーマでこの曲に辿り着いたの?」田中さんからは生徒の皆さんに具体的な質問が投げかけられていきます。その答えとして、生徒の皆さんは実際にリスナーである自分自身が音楽で心動かされた体験に紐付けながら選曲していったと言います。初めて聴く曲から、テーマとの意外な組み合わせの曲まで、田中さんも驚きのラインナップだった今回の発表。「この曲はいつどこで知ったの?」「普段はどうやって音楽を聴いてる?」など、田中さんと生徒の皆さんによる音楽についての対話はさらに広がっていきました。


自分自身を感動させたいというクリエーションのきっかけ
「皆さんには僕が56年間をかけている仕事の一部を体験してもらいました。その出来は素晴らしかった。リスナーである自分を感動させたい。その想いを起点に作品をつくりあげることが大切な視点だと思います。10代のうちに好きな曲にいっぱい出会って欲しいし、その出会いはきっと将来にも活かされていきます」という田中さんからのエールは、クリエーションの大先輩でもありつつ、生徒の皆さんと同じように音楽に熱中するリスナーの一員でもあり、豊かな音楽の文化に身を委ねる喜びに溢れているものでした。


これからのクリエーションに生まれる変化
全2回の授業を通して田中さんのクリエーションを追体験していった今回。つくり手でありながらそれを楽しむ受け手でもあることの前提を捉え、生徒の皆さんのクリエーションにはどんな変化が生まれていくのか。これから続く授業も楽しみです。

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