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「EDIT CITY 都市の探検と編集」第3回 面白がる気持ちに委ねてみること


編集者としての生き方や視点に触れる
「EDIT CITY 都市の探検と編集」は編集のクラス。紙媒体を作り上げることの可能性や、街を面白がる様々な視点を学んでいきながら、全10回の授業を通して生徒一人一人が都市を舞台にした本づくりに挑戦していきます。

9月28日(水)は、第3回授業「面白がる気持ちに委ねてみること」を開催しました。講師は、編集者の都築響一さん。これまでの数多くの著作や活動を紐解いていきながら、ご自身の編集者としての職業観に迫っていきました。

 


面白いことは実は目の前に転がってる
「魅力的なものや面白いことは僕たちのすぐ近くにあるのに、大きなメディアには載らないし誰も見ていない。そういったものが世の中には本当にたくさんある。僕はそれをずっと追いかけてきました」と都築さん。前半では、大学在学中に始めた雑誌「POPEYE」編集部のアルバイトから40年以上フリーで編集者として活躍し続ける都築さんの著作や活動を通して、編集者としての視点や想いを語ってくださいました。

例えば、世界のインテリア・建築雑誌で取り上げられていた綺麗に整えられた日本家屋ではなく、当時の若者が実際に暮らしていたアパートや学生寮の写真を通して、都市のリアルな生活を捉えた「TOKYO STYLE」。都心部や観光名所だけではない日本の面白いスポットを、道路地図や人づてに実際に全国を巡って発見した「ROADSIDERS JAPAN」。さらに、2012年から個人で編集・発行しているメールマガジン「ROADSIDERS weekly」では、人や場所、イベントのレポートやインタビュー記事など都築さんご自身がレコメンドする様々なものを掲載して毎週発行しており、配信数は現在500件を越えると言います。圧倒的な情報量とともに、そこに込められた想いやご自身の考えを一つ一つ解説してくれる都築さんの姿そのものに、生徒の皆さんも喚起されているようです。それらの活動のもとにあるのは、「自分に今見えているものは本当に世界の一部に過ぎない」という、本を作り始めてから現在までずっと抱えているご自身の想いだと言います。「自分の知らないところに広大な面白い世界が広がっている。それを自分の足で見つけていくことの大切さを知ってほしい」という生徒の皆さんに向けられたメッセージは、まさにご自身が活動を通して体現し続けているもののように感じられます。

 


「創りたい」「伝えたい」という想いに勝てるものはない
後半では、都築さんご自身が創作の姿勢や熱量に衝撃を受けたというクリエイターの作品を紹介。例えば、都築さんが「今一番かっこいいと思っている写真家」だという、天野裕氏さんの写真集。全国を巡りながら、撮った写真を現地のコンビニでプリントして手作りの冊子にし、写真を売るのではなく冊子を行く先々で人に見せることで10年以上写真家として生計を立てているのだと言います。例えば、都築さんがロシアに通ってやっと手に入れたという冷戦当時のソビエト連邦で作られた手作りのレコード盤。厳しい規制によって自由に音楽を輸入したり聴いたりすることができなかったため、使い終わったレントゲン写真を使って自作し、一部の人たちの間で密かに聴かれていたのだそう。実物をレコードプレイヤーで再生しながら、「手作りだからもちろん音質はよくない。でも、大きなリスクを負ってでもどうしても聴きたい、誰かに聴かせたいという強い想いの前ではどうでもいいことだと思う」と都築さんは言います。

「今日紹介した人たちのように、人知れず、切実な想いを持って一人で創作をし続けている人が実は世の中にごまんといるはず。作品の面白さもあるけど、そういう人たちの生き様が自分の背中を押してくれる感じがします。売れることや有名になることよりも大切なことがたくさんあると教えてくれる。悩む暇があったら、もう一冊本を作ろう写真を撮ろうと、僕はこういう人たちとの出会いから教わりました」というご自身の創作の根幹にあるような言葉は、編集者や様々な表現分野での活動を志す生徒の皆さんへ深く響いていたようでした。

 


熱量から生まれる対話
都築さんの編集者としての軌跡を、授業を通してまさに浴びるように受け取った生徒の皆さん。最後には、「油絵をやりたいなと思っていたけど、お金がなくて絵の具が買えず、心が折れていた。でも今日の都築さんの話を聞いて、自分の身の回りにあるものでなんとでもできるんだなと思い、元気が出ました」「クリエイティブなことに興味がある人でも、途中で諦める人や就活をするためにやめてしまう人も多い。でも都築さんは自分の好きなことに正直ですごいと思いました。自分もそうやって生きたい。最初から自分の好きなように生きられていましたか?」とそれぞれの率直な想いや悩みを伝えたり、「都築さんの『TOKYO STYLE』が好きです。本の中に出てくるこの部屋が気になったんですけど、どんな人が住んでいたんですか?」と、著作についての質問をぶつけたり。都築さんと、生徒一人一人との対話の時間も生まれていました。

 


次回は、自分なりの視点を持ちながら渋谷の街を探検する
次回の第4回授業のテーマは「街を探検する(at 渋谷)」。様々なZINEに触れ、街をテーマにした表現のあり方や編集的な考え方を学んでいったこれまでの3回の授業。それらを踏まえて今回は、生徒それぞれが渋谷の街を自由に歩き、自分なりの視点で街を捉えていくことを実践していきます。

 

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