REPORT

「Beyond the Music(第2期)」第6回 理論と実践


音楽にまつわる「理論と実践」
音楽を通じて、言語、文化、歴史、物理、民族、テクノロジーといった、他の領域への学びを深めていく「Beyond the Music」。WONK/millennium paradeキーボーディストの江﨑文武さんが総合ディレクターを務め、授業ごとに幅広い分野で活躍する方をゲスト講師に迎えます。

2022年3月より開講してきた今年度の授業も、いよいよ最終回。9月27日(火)は、第6回授業「理論と実践」を開講しました。ゲストは、音楽家/音楽プロデューサーの冨田ラボ(冨田恵一)さん。数々のミュージシャンと協業されてきた冨田さんによる楽曲を題材に、音楽制作にまつわる「理論と実践」を紐解いていきます。授業の後半では、生徒の自作楽曲についての講評も。講師のお二人から作曲やミックスの観点で具体的なアドバイスもいただきました。

 


曲作りのプロセスを、楽曲を分解しながら捉えていく
「このクラスでは、建築家やデザイナーなど、様々な分野で活動するゲストを招いて授業を実施してきましたが、生徒の中には自主的に曲作りをしている人がたくさんいて、曲作りに関して質問や相談を受けることも時々ありました。なので最終回はあえて、音楽制作をテーマにしてみようと思います。ゲストの冨田さんは僕にとっても音楽の大先輩。自分も生徒になった気持ちで一緒に学びたいと思います」と江﨑さん。授業の前半では、冨田さんのこれまでに手がけられた楽曲を紹介いただきながら、作編曲家・音楽プロデューサーという仕事に迫っていきました。

実際に冨田さんが編曲された楽曲を題材に、編曲前後の音源を聴き比べたり、パラデータ(楽器ごとに書き出されたオーディオファイル)を使って楽器ごとに分解しながら聴いてみたり。普段は聴くことができないような貴重な音源を惜しみなく流しながら、時にはキーボードを弾きながら、曲作りのプロセスを細かく解説してくれる冨田さん。そんな冨田さんの、膨大な知識や経験や技術を惜しみなくオープンにしていく姿そのものにも、生徒の皆さんは圧倒されているようでした。さらに、ご自身の影響を受けた楽曲をまとめたプレイリストも紹介。例えば、映画「ティファニーで朝食を」の劇中歌『Moon River』の作曲などで知られるヘンリー・マンシーニや20世紀を代表するポップス作曲家であるバート・バカラック。小学生時代にそれらのポピュラーミュージックとの出会いが音楽的な基盤になったこと。例えば、アンビエント・ミュージックを開拓した第一人者として知られているブライアン・イーノや、ケンドリック・ラマーやチャンス・ザ・ラッパーのプロデュースを手がけるノサッジ・シングによる楽曲など。音階やコードではなく音色のデザインの面白さを感じてきたこと。様々な音楽を通して、冨田さんご自身の音楽的なルーツにも触れていきました。(今回のために特別に制作されたプレイリストはなんと、授業終了後に生徒の皆さんにご共有いただきました!)

「スキルと共に耳も成長する。とにかくたくさん音楽に触れることが大切だと思います。昔聴いてた曲を改めて聴いてみると聴こえ方が全然変わってきたり、同じ曲を何度も繰り返し聴くことではじめは気づかなかった曲のディティールがみえてきたり。その違いを感じることは、とても勉強になると思いますし、楽しいので、ぜひ試してみてほしい」という冨田さんの言葉を、生徒の皆さんはまさに授業の中で体感していくようでした。

 


生徒一人一人の作品をレビュー
授業の後半では、自主的に曲作りをしている生徒の方々がそれぞれの作品を持ち寄り、講師のお二人からアドバイスをいただく時間に。

ギターやベース、ドラム、ピアノなど、全ての楽器を自分で演奏していたり、ボーカロイドを使ってDTMで曲作りをしていたり、ボーカルを録音して入れていたり。中には、ミュージックビデオ付きで発表する方や、すでにYoutubeやSoundCloudでご自身の楽曲を配信しているという方も。創り方も曲調も多様な作品に、冨田さんと江﨑さんも驚いている様子です。そんな一人一人の作品に対し、作曲やミックスについての具体的なアドバイスをいただきながら、「かっこいい!何にインスパイアされて曲を作っているの?」「声がすごくいいね。途中で歌い方が変えているのはなぜ?」「普段はどんな音楽を聴くの?」と、講師の方々からの問いかけも広がっていきました。

 


自分の音楽が社会でどのように聴かれるか、という視点を持つこと
「音楽は常に社会と密接に関わっている。自分の音楽がどのように人へ届いて、どんな環境で聴かれるのか、ということを意識しながら創作に取り組んでほしいなと思います。これは音楽を仕事にしていく上でも、他の領域のものづくりをする上でも大切なこと。この授業が、そういった視点を得るきっかけになっていたらいいなと思います。これからも、ぜひ果敢に創作に取り組んでください!」と、江﨑さん。授業の終わりには、音楽や、様々な創作活動に取り組む生徒の皆さんへのエールとなるようなコメントもいただき、6回にわたって実施された今年度の「Beyond the Music」が締めくくられました。生徒の皆さん、先生方、お疲れ様でした!

 

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