REPORT

「東京芸術中学(第2期)」 第9回 田中知之さん


ミュージシャンでありながらリスナーでもあるというプロデューサーという仕事に迫る
編集者・菅付雅信さんと13人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。6月11日(土)はプロデューサーでDJ、選曲家の田中知之さんによる1回目の授業です。

現在はプロデューサーとしてグローバルに活動する田中さんですが、過去には芸中ディレクターの菅付さんと同じ編集者としても活動していたそう。今回の授業ではそんな田中さんのキャリアを紐解きながら、「ミュージシャンでありながらリスナーであり続ける」というクリエーションへの向き合い方に触れていきました。




自分の才能以上のものをつくりあげるために
授業はまず田中さんのこれまでについて。高校時代は吹奏楽部と軽音楽部を兼部し、大学時代はニューウェーブバンドのベーシストを務めデビューまであと少しだったりと音楽に熱中されていた一方で、様々な方向への興味は尽きなかったそう。大学卒業後はファッションへの関心からアパレルメーカーに就職。食文化への造詣の深さから、勧められて食のメディアの編集に携わることに。「好き」が高じて、様々な出会いの中で多くの仕事を手がけられていきます。そして現在はミュージシャンとしてプロデューサー、DJ、選曲家として活躍する田中さん。昨年開催された東京オリンピックの開会式のためやルイヴィトンのコマーシャル映像のための楽曲プロデュース、さらにはサカナクションをはじめとした多くのミュージシャンのリミックスなど、これまで手がけた作品をその制作プロセスも含めて紹介してくださいました。

そんな田中さんが普段から制作をする上で大切にしているのは、編集者時代に雑誌で読んだ菅付さんの「編集者は何もできない人。だけど、だからこそ、色々な人と結びつけばなんでもできる人になれる」という言葉だそう。田中さん自身「コードはわからないし、楽譜もヘ音記号しか読めない」「音楽を誰かに教わったことがない」からこそ、様々なアーティストと共作し「自分の才能以上のものをみんなでつくりあげる」ことを目標にしていると言います。そして、そのために自分ができることは「作品の良し悪しを判断すること、そしてその判断に責任を持つこと」だと言います。


自分自身が感動する音楽を
「大切なことは、自分自身が一人のファンであり続けること。ミュージシャンである自分はリスナーである自分を感動させたい。そう思いながら今も制作しています」。個人のクリエーションを社会につなぐ橋渡しをするような田中さんの仕事への向き合い方は、音楽のみならず、様々な表現領域においても欠かせない視点であるように感じます。ファッションや食など様々な文化へ熱中されていた様子が生徒のみなさんへの刺激にもなっていたようでした。


音楽制作のプロセスを「選曲」で体験する
そんな田中さんからの課題は、自分で設定したテーマに沿って選曲すること。「どんな場所で、どんな人が聴くのか」「その曲を選んでかけることで、どんな効果が生まれるのか」。リスナーの立場に立って制作に取り組む田中さんのクリエーションのプロセスの一端を実際に体験していきます。

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