REPORT

「Flower Shop」づくりワークショップ


授業の中で生まれたアイデアを、街を舞台に実現する
GAKUでは開校当初から、世界的建築家・伊東豊雄さんが主宰する「伊東建築塾」とともに建築のクラスを毎年実施しています。その第3期目となる「この町を大事に思えるキオスク」では、10代の生徒一人ひとりが渋谷川沿いエリアを舞台にした商いの空間を構想し、模型やスケッチを通して表現していきました(授業の様子や生徒の皆さんの作品は、「REPORT」ページからご覧いただけます)。

3月16日、17日の二日間にわたり開催された「『Flower Shop』づくりワークショップ」は、その中のアイデアの一つである「Flower Shop」を、渋谷川沿いのエリアで実際に形にしてみるというもの。「SHIBUYA SLOW STREAM」のプログラムの一環として、生徒のアイデアを実現する機会が叶いました。アトリエスタイルの花屋「fiore soffitta」さんにサポートをいただきながら、渋谷川のほとりの草花を摘んだり、「Flower Shop」のための空間をつくったり、実際に販売員として店頭に立ってみたり。お店づくりの最初から最後までを、アイデア発案者の平田里帆さんや集まった10代の皆さんと体験しながら、「この町を大事に思えるキオスク」を実践していきました。

 



地域の草花も一緒に並ぶ、町のお花屋さん
「市場で仕入れたお花だけでなくその場所に生えている草花も一緒に並べることで、町の風景そのものを表していくようなお花屋さんをつくりたい」という想いが込められた「Flower Shop」。ワークショップ1日目はまず、渋谷川のほとりで草花を摘むところから始まりました。店頭に並ぶことを想像しつつ川沿いに改めてじっくり目を向けてみると、「雑草」と一言で片付けてしまうにはもったいないほど、実はたくさんの種類の植物が生えていることに気づきます。

草花を摘み終わった後は、お花屋さんとしての空間づくり。舞台となるのは、渋谷川沿いエリアにある商業施設「渋谷ストリーム」。今回は3Fのスペースに一からお店を立ち上げていきます。草花の茎の長さや葉っぱのバランスを整える。植物を種類ごとに分けたり、複数の種類を合わせてアレンジメントしたりしながら花器に生ける。人の導線や見え方を意識しながら、什器や花器を並べる。置かれる位置や組み合わせによって植物の表情や空間全体の雰囲気が変化していく様子を体感しながら、レイアウトを少しずつ調整していきます。実際に自分たちの手で摘んだ草花も交えているからこそ、その細かな作業にも熱がこもります。

「こんな風に見てもらいたいな」「こうしたらよりお店に興味を持ってもらえるかも!」と、みんなで話し合いながらお店の看板を作ったり、花器にその植物の花言葉や豆知識を直接書き込んでいったりと、お店づくりのプロセスの中で新しいアイデアが生まれ、実践されていく様子もとても印象的でした。

 


自分たちで作り上げた空間に、お客さんを迎え入れる
ワークショップ二日目は、実際に生徒の皆さん一人ひとりが販売員として店頭に立ち、お客さんを迎え入れていきます。

今回は、お客さん自身がセレクトする3本セットの花束、生徒の皆さんによるアレンジメントフラワーを、それぞれ「3 Flowers」「Box Flower」と名付けて販売。「看板をもう少し外側に置いたほうが、通行人の人の目に触れやすいかも」「お花の料金や買い方をもっとわかりやすく書いて貼っておいた方が、お客さん的には買いやすいかも」「お花の数が少なくなってきたから、さみしい雰囲気になってしまわないように花器のお花を入れ替えよう」と、お客さんの様子やお花の売れ行きを見ながら、営業をしつつも、お店づくりが続いていきます。空間を作って終わりではなく、それを状況に応じて変化させていきながら営む。「商う」ことのリアリティを体感していくような機会になっていきました。

 


クリエーションと教育と街づくりが重なるところ
草花を摘むところから空間づくり、実際にお店として運営するところまでをみんなで行い、作り上げていった「Flower shop」。生徒の皆さんの創意工夫と頑張りにより、二日間でおよそ90セット以上の花束とアレンジメントを購入いただくことが叶い、それらの売上は能登半島地震による災害義援金への寄付に充てることにしました。

GAKUでは引き続き、生徒の作品の発表や実現の機会を作っていくことを通して、クリエーションと教育と街づくりが重なるところを探求していきたいと思います。今後の活動にも、ぜひご期待ください。

そして、今回の「Flower shop」の実現に際し、このアイデアが生まれるきっかけとなったクラス「この町を大事に思えるキオスク」の活動記録冊子を制作しました。現在、冊子現物はGAKUスペースや伊東建築塾アトリエにて無料配布中、PDF版もGAKUウェブサイトで無料公開しています。ぜひご覧ください。

(Photo:立山大貴、佐藤海)

 

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「この町を大事に思えるキオスク」活動記録冊子のPDF版はこちら