REPORT

「『私をつくる教室』をつくる」第10回 最終発表会


完成した模型を手に、アイデアの最終プレゼンテーション
「『私をつくる教室』をつくる」は、世界的建築家・伊東豊雄さんが主催する建築塾「伊東建築塾」による建築のクラス。講師は、昨年度に引き続きPERSIMMON HILLS architectsの廣岡周平さんとKASAの佐藤敬さん。今年度は全10回の授業を通じて、「教室」のアイデアを深めながら、実現していくことを目指していきました。

3月3日(日)には、生徒の皆さんそれぞれがこれまでの授業を通して検討を進めてきた「私をつくる教室」の最終発表会を行いました。講評者には、講師の廣岡さんと佐藤さんに加え、特別講師の伊東豊雄さん、百田有希さんの4名をお迎えし、生徒一人ひとりが作り上げた模型を手にこれまでの成果を発表。全15作品の中から、最優秀賞と講師陣それぞれからの個人賞が選ばれました。

 


半年間の集大成が一同に会する
「農家さんや漁師さんと一緒に、食材を作るところから、料理して食べるところまでを体験することで食を学ぶ教室。参加する人同士が手を動かしながら学びを分かち合えるような空間にするために、建築の素材はなるべく植物や自然のものだけにして、自分たちが育てたものが育つほど建築も育っていくような構造にしたい」「他の人がどんなものを美しいと思い心が動かされているのか、ということを知るための教室。湖やその周りの自然をみて感じたことをその場所に言葉で書き記して残すことで、色んな人の心の動きが蓄積されていく空間を作って、学びの場としたい」「サイクリストのための教室。空間の中にサイクリングコースを作って、走りながら他のサイクリストの姿をみて学んだり、サイクリスト同士で交流したりするような場所も作りたい。周辺に住む人も気軽に訪れられるようなものにして、サイクリングに興味を持ってくれたら嬉しいな」と、生徒の皆さん。

「こんなことを、こんな風に学びたい!」と自由に思い描くことと、それを実現するためのしつらえや構造を考えていくこと。その両面を見つめることで生まれる矛盾や難しさを乗り越えながら、そして、具体的な建築のあり方や敷地を想像することによって新たなインスピレーションも受け取っていきながら、検討を進めてきたこれまでの授業。そういった半年間の試行錯誤が、生徒の皆さん一人ひとりの言葉や模型に表れていきます。その努力を労い、讃えるように、アイデア一つ一つと真摯に向き合い応答するようなコメントを贈っていく講師の方々の様子もとても印象的です。

例えば、「みんな現実の世界だけで建築を考えてしまう。でもそれだけだと美しくならない。空の美しさがどういうふうに建築になれるだろうか、といったことを考えたりするともっと建築は面白くなると思う」「本当に自分のやりたいことをするために、いかに他のものを取り去れるか。余計なものを置くと意図が薄まってしまう」「怒りとかコンプレックスが建築の原点になってると僕は思う」といった伊東さんの言葉など。アイデアへのフィードバックとともに、講師それぞれの建築家としての姿勢や想いも窺い知れるような貴重な時間になっていきました。

 


個々の切実さによって生まれたアイデアの中にある批評性
最後には、講師の方々から生徒の皆さんへ、半年間に渡って開講された授業を締めくくるようなメッセージが贈られました。


伊東豊雄さん「みんなのアイデアは本当に自由で、その中に現代社会に対しての批評性がちゃんとあることがとても素晴らしいと思った。意識的に思ってなくても、無意識にそれがアイデアの中に表れている。将来、建築家にならなかったとしても、その想いを忘れないで欲しい」


廣岡周平さん「それぞれの腹の底から出てきたアイデアを見れたことがとても刺激的でした。今あるものを変えていこう、覆そうというパワーがその原動力となってるのがとても良かった。本当に元気が出たし、希望を感じられました」


佐藤敬さん「みんなのプレゼンテーションにとても心を打たれました。それは、ちゃんと自分の実感のこもった言葉で語れているからだと思う。スケッチを書いたり模型を作ったりと検討を重ねていきながら、自分のアイデアを最後までつき通したことで、自分の夢やみんなの夢に立ち向かえたのではないかと思います」


百田有希さん「感動しました。負けちゃいけないなと本気で思いました。建築は勉強していく中で、建築物として形にするための色々なノウハウを学んでいくけど、こういうものを作ってみたいという構想を持つことがなにより大切であるということをみんなのアイデアから改めて感じました」

 


作品の合同展覧会を開催予定
今回の授業を通して生徒の皆さんが作り上げたアイデアは、同じく「学び」をテーマにしていた今年度のプロダクトデザインのクラス「ものづくりと場づくり」との合同展示を予定しています。詳細は決まり次第GAKUウェブサイトおよびSNSにてお知らせしていきますので、ぜひご期待ください。

(写真・執筆:佐藤海)

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