REPORT

「我美と作美」第2回 美しさと社会


歴史を紐解いて体感する美の多様性
これからの時代の美意識をつくっていく10代が、メイクアップを通して自分らしい「美」の表現や発信に挑戦する「我美と作美」。

計良宏文さん(資生堂トップヘアメイクアップアーティスト/「SABFA」校長)、山縣 良和(writtenafterwardsデザイナー/ coconogacco代表/GAKUディレクター)のレクチャーを通して全7回の授業の全貌を確認していった初回授業。続く、1月21日に行われた第2回では、メディア環境学者の久保友香さんをお迎えし、時代や社会によって影響を受ける「美しさ」の変遷を学んでいきました。






いつの時代にも変わらない「作美」という営みと変わる「美しさ」
日本最古の美人画とされる高松塚古墳壁画から平成のアニメまで。時代ごとの美の価値観を確認していきます。香りや句などの教養を含めた捉えられていた美。目を細く厚みがあるように見せることが良いとされていた時代の美(目を細く見せるための化粧法がノウハウとして紹介されていた書籍があるほど)。サインペンである白いポスカも化粧道具として使われて表現されていた美。時代によって美の価値観が変遷していく様子をその背景にある社会状況とともに紐解いていくと、多様な美のあり方が浮かび上がっていきます。同時に、理想的な姿を目指して創作をしていく「作美」の時代を超える営みも感じていきます。

また、時代ごとの美しさの変遷をさらに深く味わうために、久保さんが開発した「Orikao Method(折顔メソッド)」も体験。自分の顔を出力した紙を折り紙のような要領でいろんな折り方を試していくと、時代ごとの美人画の顔のように変わっていきます。知識ではわかっていても、実際に自分の顔を素材にその変化を目にすると「作美」の手応えも感じやすくなっていくようです。「そもそも現代の人間の顔と比べても顔の造りそのものは昔の人も、それほど変わらないはず。でも、顔が違って見えるのは、まさに『作美』の方法が異なってくるんですよね」と言われるように、時代ごとの美しさの変遷を自分ごととして捉えていきます。


過去と未来の美しさを学び、現在の美しさを考える
文化としての「盛り」を研究されている久保さんのお話は、「盛り」という営みの拡張についても及びます。「『顔を盛る』から『全身や背景などのシーン全体で盛る』、そして『ライフスタイルを盛る』というように、メディアの技術進歩に併せてここ25年でどんどん変化している」ようです。そこには、ヘアメイクを「髪と顔」だけではない観点から考えていくためのヒントがあるようでした。



次回は、自分の中にある美を探求する
次回はメイクアップアーティストでもあり僧侶でもある西村宏堂さんをお迎えし、「美と多様性」というテーマのもと、生徒の皆さんの個々の美意識と向き合っていきます。西村さんからの事前宿題は、「わたしが提案したい美しさ」をテーマに自由に作品を制作してくるというもの。併せて「あなたが社会でよく見る『美しさ』の中で、おかしい・問題だと思う点はありますか?」「あなたが美しいと思うけれど、人に言いづらいと思うものはありますか?」「あなたは芸術を通して、何を表現したいですか?」といった投げかけを頂いています。これからのメッセージを受け止め、答えていくことによって、それぞれの「我美」の原点が見つかっていくことが期待されます。実際に作る前に、知り・考える作業。生徒の皆さんの中にどのような美意識が形作られていくか、とても楽しみです。

 

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