REPORT

「東京芸術中学」第62回 片山真理さん


フィルムカメラは「光と時間」を記録する
編集者・菅付雅信さんと15人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。1月22日のゲスト講師はアーティストの片山真理さんです。

昨年に続き今回で芸中3度目の登壇となる片山さん。今回は、現在開催中の個展「leave-taking」( AKIO NAGASAWA GALLERY GINZA、2022年2月19日まで)をはじめ片山さんが多くの作品制作に用いるフィルムカメラに着目し、その構造や原理について学んでいきます。その上で、「『光と時間』を記録する」と言うフィルムカメラの特徴を捉えた表現の可能性を探っていきました。





触れながらフィルムカメラの原理を学ぶ
自身の左手を模したオブジェクト、義足へのペインティング、全身をフィルムカメラで撮影するセルフポートレートなど。まずは10代の頃の作品から最新作まで、これまで片山さんが様々な手法でつくってきた作品が紹介されます。それらの作品の変遷を確認しながら、一つの手法に縛られず作品をつくり続ける片山さんのクリエーションに対する姿勢を捉えていきます。

今回は片山さんの様々な手法の中から、現在開催中の個展でも多く用いられているフィルムカメラについての講義。暗くしたGAKUの壁にライトを当てて光が像を作る原理を体験したり、片山さん直筆のイラストを参考にシャッタースピードの構造を学んだり。さらには実際に片山さんが使っているフィルムやコンタクトシートなど、10代の生徒の皆さんにとっては新鮮なツールに実際に触れながら、フィルムカメラで撮影し実際に写真に焼きあがるまでのプロセスについても理解を深めていきます。

「今回フィルムカメラを使ったのは『光と時間』を真空パックしたかったから」と片山さん。日々成長していく自身のお子さんの一瞬一瞬を事実として記録したいという想いをきっかけにフィルムカメラを手に取り、オブジェクトやペインティング、そして自身の姿を写す今回の制作でもフィルムカメラを選択したと言います。そのようなご自身の体験を踏まえながら、「ほかにも『光と時間』に関する表現ってあるんじゃないかなとも思うんです。みんなはどう思いますか?」と、投げかけられます。生徒の皆さんも「映画は光を投影して見るから関係しそう」、「iPhoneのパノラマ機能って撮るときに時間がかかるな」など、「光と時間」というキーワードをきっかけに片山さんとの対話が深まっていきました。


光を捉え時間を反転させる、写真という表現
「レンズを通すと像は反転する。同時に過去と現在も反転するんです。つまり消え去っていく過去が写真として残っていく。そして今見ている現在は写真には映らない。そんなことを考えながら今回の作品をつくってきました」。最後に片山さんからは個展「leave-taking」に向けた想いが語られます。さらに「人ってインプットしたものしかアウトプットできない。当たり前だけど、娘を見ていて本当にそう思います。どんな些細なことも全部作品に反映されるはず。だから芸術をやっている人にはどんなことも無駄ではないと思います。」と、生徒の皆さんに向けたエールも贈られました。



自分に合った手法で自分を表現する
片山さんのクリエーションに対する姿勢、そしてフィルムカメラという手法を通じた表現の可能性を探った今回の授業はこれで終了。次回2月26日の片山さんの授業では、「『光と時間』が関係する表現ってなんだろう?」という今回の問いかけを個人でより深めて発表を行います。発表の形式は「光と時間」に関する作品をつくることはもちろん、「光と時間」について考えたことを口頭で説明するなど、それぞれが自分に合った手法を選んでいきます。

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