「Town Play Studies」特別講座 TPS in 日本橋横山町・馬喰町
「日本橋横山町・馬喰町」の街をフィールドにした特別講座
街を舞台に、「遊び」を通してリアルな都市空間や建築デザインを学んでいく「Town Play Studies」。講師を務める建築家の海法圭さん、津川恵理さん、建築リサーチャーの川勝真一さんと、東京理科大学理工学部建築学科西田研究室の学生の皆さんとともに、身体的なコミュニケーションである「遊び」を通して、これからの都市や建築のあり方を拓いていきます。
3月20日(日)は、実際の街をフィールドにした1日の特別講座を開催。舞台は「日本橋横山町・馬喰町」。会場は、コミュニティスペース「+PLUS LOBBY 日本橋問屋街」です。これまでの「Town Play Studies」の方法論を当てはめて、レクチャーとフィールドワークの2本立てで、この地域の魅力や都市像を浮かび上がらせていきました。
遊びを通して地域の可能性を最大化する
まずは、「遊び」がこれからの働き方や暮らし方の重要なキーワードになっていることに注目したレクチャー。例えば、観光地やリゾート地で働きながら休暇をとる「ワーケーション」、遠隔操作のごみ収集ロボを使ってゲーム感覚で実際に河川を綺麗にするアメリカの「Trashbot」でみられる「ゲーミフィケーション」の方法論など。世界中で実践されている遊びを活用した実例を紹介。「用途で空間を切り分けるのではなく、ゆるやかに混ぜ合わせていくこと」が鍵になると建築リサーチャーの川勝さんが言うように、「遊び」と「仕事」など一見対照的な営みが融合されていくこの時代において建築や都市がどのように向き合っていくべきかという課題感が共有されていきます。
フィールドワークでは、この地域で商業を営む問屋さんや建築家など様々な方々とともに「まちZINE」「YES SIGN」の2つの「遊び」を実践していきます。問屋さんの建物ならではの「従業員用入り口」。もともと建っていた建物の上に新たな建物が積み上げられている「上書き」。グリッド状に道が作られている土地の特徴。この地域での発見を1冊にまとめて様々な「まちZINE」が完成します。地域の植栽への水やりOK。休日のお店のひさしを使ってOK。工事中のフェンスへの落書きOK。「YES SIGN」では、禁止ではなく「許容する」ルールをグループごとに考案し、AR技術を使って実際に街の中に実装していきます。
[ゲストの方々]
唐品知浩さん(合同会社パッチワークス)
丸山裕貴さん(勝亦丸山建築計画)
鳥山貴弘さん(日東タオル)
堀田卓哉さん(Culture Generation Japan)
永田大樹さん(エンジョイワークス)
「面白がる」ことから生まれる小さな発見が、より良い街をつくっていく
「これまでの街づくりは、空いている空間に住居やお店を隙間なく詰め込んでいくようなものがほとんどでした。しかし、より良い街を作っていくには『機能的であること』が必ずしも重要ではなくて、その空間があることで心が少し安らいだり、暮らす人たちそれぞれの面白がる余白があったりするような空間があることも、魅力的な街の形の1つだと思う。今回の講座を通して、そんな風にこれからの街の一人ひとりが考えるきっかけが生まれていたらいいなと思います」と、川勝さん。
「皆さんそれぞれの、様々な街の捉え方や発想に触れることができ、とても面白かったです。今回の遊びを通して、街を純粋に面白がろうとする皆さんの姿勢は、建築やまちづくりをしていく上でとてもに重要なこと。そこから生まれる素朴な気づきや発見は、街をより良くしていくタネになると思っています。その感覚をぜひ大切にしてください」と、海法さん。遊び気分でフィールドワークや制作を進めた体験について、建築や都市デザインの観点での意味を確認していきました。
この地域ならではの魅力も、都市そのものの持つ豊かさも浮かび上がる
実際の街を舞台に、まさに「遊びのアーバニズム」を実践していった今回。江戸時代から続く商業や暮らしの歴史を持ち、日本一のファッション関係の卸売問屋街として知られるこの地域の魅力や新たな可能性が浮かび上がったように思います。また、これまでの「Town Play Studies」に参加してきてくれていた方とともに今回の特別講座から新たに参加してくれた10代、この土地にゆかりのある方々など、年代や背景のそれぞれ異なった人たちが街を通して協働し、意見を交わし合う、多様な人々が暮らす「都市」そのものの豊かさにも改めて触れる機会になりました。