REPORT

「農暮らす/ agri class」第4回 地球とミライ


サステナビリティとクリエーションが重なるところ
食やファッション、宇宙まで、様々な分野の専門家やクリエイターと10代がこれからのクリエーションとサステナビリティのあり方を展望していく「農暮らす/ agri class」。

3月27日(日)、最終回となる今回のテーマは「地球とミライ」。講師は、地球観測衛星「いぶき」の開発に携わり、地球環境を観測し続けるJAXA研究開発員の安部眞史さん、そして「いぶき」の認知拡大プロジェクトを安部さんと企画したクリエイティブ・ディレクターの大塚智さん。お二人が手がけたプロジェクトをケーススタディに、生徒の皆さんも実際に環境課題の解決のためのプロジェクトを考案することで学んでいきました。




科学的なデータや事実を公開するだけで効果を生むのは難しいから
授業はJAXAの安部さんによる講義からスタート。アラスカに突如発生した砂漠、海面上昇によって住処を失う動物など、地球が直面している深刻な環境課は例にあげると枚挙に暇がありません。そして、長年にわたり地球を観測しつづける「いぶき」から見えたのは、増え続ける温室効果ガス、止まらない温暖化の現状だと言います。砂漠化や海面上昇といったものだけではなく、大雨や猛暑日の増加、農業・酪農業・漁業など私たちの生活にも既に影響が出ています。ですが、こうした科学的なデータや事実を公開するだけでは人々の環境課題に向かう気運を盛り上げることが難しいことは、「いぶき」の認知度の低さからも明らかであったと、その実情も語ってくださいます。

そこで、クリエイティヴ・ディレクターである大塚さんは「環境課題」に「食」を組み合わせたプロジェクトを発案。「未来レストランいぶき」と名付けられたレストランを期間限定でオープンしました。そこでは、小麦粉の収穫量が低下するため透明になったたこ焼きや、漁業への影響予測を反映し果物がネタとして乗ったお寿司など、「このまま温暖化が進行した場合にわたし達が食べるかもしれない料理」を提供。カンヌ国際広告祭を受賞するほど大きな話題を呼び、「いぶき」そのものの認知度も高まっていったそうです。「環境課題」と「食」、意外にも想えるこの組み合わせが一つが大きな課題に対する向かい方を育んでいく。そんな実例を発案し実行した当事者の方々からのお話に、生徒の皆さんは真剣に耳を傾けます。






自分の「好き」からはじめてみる
後半は、大塚さんの実例を参考に、生徒の皆さんも環境課題を解決に導くプロジェクトを考えるワークショップに取り掛かります。前半を振り返りながら「重要なのは自分自身が能動的になれる要素を大切にすること」と大塚さん。実は大塚さんが「地球温暖化」に「食」を紐付けたのは、ご自身が料理好きだからというのも一因であるそう。そんな後押しもあってか、生徒の皆さんは「能楽」「アイドル」「カードゲーム」「アプリ」「レバノン料理」「何もしない時間」「展示会巡り」など、まずは自分自身が驚いたり楽しんだりできるような要素をピックし、環境課題との意外な組合わせを導き出していきます。

「エコポイントを貯めると行けるライブ」「自分の陣地の環境を守りきるカードゲーム」「裸足で入場して温暖化を感じる展示会」「世界中の人が同時に衣装も楽器もゴミからつくって同時配信する音楽祭」「豆だけでつくる環境に優しいレバノン料理」などなど。教室を周回する安部さんと大塚さんとのディスカッションを重ねながら、自分の興味を通したプロジェクトがいくつもできあがっていき、最後にはそれぞれポスターにまとめて発表を行いました。



それぞれの視点を育んでいくこと
「環境課題だけについて考えると、思考回路が同じようなものになりがち。だけど、その前に自分だけの興味を掘り下げてみる。そうすると、一見全く関係ないように思える視点からこの課題にもアプローチしていける。そして、新しい発想が生まれてくる。そんな『クリエイティビティ』の力を今日は皆さんが発揮してくれたと思います」と大塚さん。「アイデアを形にすることって実は怖いことでもあるんです。だって正解がないじゃないですか?だけど皆さんは恐れずに正面からぶつかってくれた。この体験はこれからも大切にして欲しいし、皆さんには自信を持って欲しいです」と安部さん。

発表されたアイディアにひとつずつフィードバックを頂きながら、最後にあたたかい応援メッセージが贈られました。


地球・クリエーション・これからの世代のミライ
農家、シェフ、ファッションデザイナー、クリエイティブ・ディレクター、そしてJAXAの研究開発員の方々。これまで4回の授業を通じて、クリエイターでもある多く講師と共にこれからのクリエーションとサステナビリティのあり方を展望していったこのクラス。初回からの授業を振り返ってみると、まず自分で自分の活動を楽しんでいる講師の方々の姿が思い起こされます。自分自身が能動的になれる「自分ごと」としてクリエーションを見つけることで、その先に、「自分ごと」としてのサステナビリティを実現するためのアクションが続いている、そんな「これからのクリエーションとサステナビリティのあり方」をつかむと同時に、様々なクリエーションのあり方に触れることができたクラスとなりました。

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