「東京芸術中学」第70回 自分の星を見つける②
ルーツでありロールモデル、そんな「星」を探す
編集者・菅付雅信さんと15人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。3月19日は、ディレクターの菅付さん自身による講義「自分の星を見つける」の2回目の授業が行われました。
前回は、今現在活躍する作家たちにインスピレーションを与えてきた過去の作品や作家を「星」として菅付さんが紹介。時には菅付さん自身の「星」も紹介いただきながら、自分の中に目標となるクリエイター像を捉えることがこれから歩む道筋を明確にしてくれることを学んでいきました。そして今回は、生徒の皆さんが課題としてそれぞれの「星」を発表。自分自身の感性から示すこと。現在の社会において客観的に示すこと。歴史的な文脈において示すこと。「星」である理由を3つの観点から意味付けすることを通して、自分なりの「星」を見出していきました。
自分、社会、歴史から考える「好き」の理由
これまでの課題では水彩画を多く描いていた方は「バンクシー」、アニメーションやグラフィックに興味があると言う方はディズニー映画「ウォーリー」、胸元に「NO WAR」のピンバッジを付けた方は「ジョン・レノンとオノ・ヨーコ」。生徒の皆さんがあげる「星」は様々ですが、これまで重ねてきた授業の数々を振り返るとどこか納得もできるようなラインナップに感じられます。
「街すらキャンバスにしてしまうバンクシーのスマートな表現に惹かれています。自分にとって『星』である理由です」「『ウォーリー』はアカデミー賞はもちろん、SF界の権威であるヒューゴー賞も受賞しています。つまり映画業界全体も、その中でSFに特化した業界も星として捉えているんです」「世界の現状を踏まえるとジョンとヨーコの平和を求める運動は忘れてはならないこと。これは今でもなお彼らが『星』であることを証明しています」。自分自身の想いはもちろん、他者はどのような評価をしていたのか、歴史にはどんな影響を及ぼしたのか、その「星」の魅力を自分以外の視点を踏まえて再考していきます。「私の『星』である志賀直哉さんに影響を受けている作家に芥川龍之介、そして芥川龍之介に影響を受けている作家に太宰治がいるそうです」と、まるで星座のように、「星」と「星」のつながりを発見した様子もありました。
クリエイターとしての自分をより理解するために
「『星』を遠くから眺めるだけではなく、その『星』に繋がるまた新しい作家や作品と出会い連なりをつかむ。そうすると自分のクリエーションにも一貫した軸が生まれてくる。そのために、今回は一つの『星』を色々な角度から観察し、それを言葉にして誰かに伝えることで整理してもらいました。このことは自分そのものを言語化し、理解していくことにも繋がっていくんです」。著名なクリエイターの方々や菅付さんご自身の体験談をもとに、クリエイターとしての生き方の深いところに自分を重ねることができたようです。
「星」と出会う場としての東京芸術中学
自分の「星」と向き合うことで、自分自身の興味や関心そのものにも向き合うことができた今回の授業。これまで様々なクリエーターと出会い、課題を制作したり、言葉を交わしたり。そんな芸中の授業の中で、生徒の皆さんはたくさんの『星』そのものに触れてきたことを今一度思い返す、そんな授業となりました。