REPORT

「遊びのアーバニズム実践学」第3回 まちZINE

「ZINE」として形にすることでつかむ新たな都市像
街を舞台に、「遊び」を通してリアルな都市空間や建築デザインを学んでいく「遊びのアーバニズム実践学」。講師を務める建築家の海法圭さん、津川恵理さん、建築リサーチャーの川勝真一さんと、東京理科大学理工学部建築学科西田研究室の学生の皆さんとともに、身体的なコミュニケーションである「遊び」から、これからの都市のあり方を考えていきます。

「漂流」「パラ・サイト」といったキーワードから、実際に都市を遊びの舞台にしながらも、建築や都市の新たなとらえ方を学んできたこれまでの授業。12月22日(火)に開講された第3回では、これらの気づきをもとに、個々の都市体験を1冊の「ZINE」として表現していきました。

 

都市をフィールドワークするための方法論を身につける
前半の講義では、アートや民俗学など、建築の分野を超えた様々な例を参照しながら、個人の都市体験から街を分析していく方法論を学んでいきます。人類の遺物から過去のあり方を解き明かしていく考古学の知見を、現在の人の暮らしに当てはめ、現代社会をとらえていく「考現学」。どこにも通じていない扉、登れない階段など、何かの経緯で残されて本来の機能を無くしてしまった「トマソン」など。それらに共通するのは、「遊びのように個人の主観的な感性で物事を解釈していくと、新しい可能性が拓けること」であり、そんな視点が、これからの豊かなまちづくりや建築デザインの鍵を握っているのだと言います。

後半では、渋谷の街での小さな発見や違和感を写真におさめ自分なりに分析しながら、「ZINE」を作り上げていきます。写真の順番や紙の色、本の綴じ方など、アウトプットの形を試行錯誤しながら、写真に収まりきらない街への想いや個々の肌感覚も、読み物という形を通して表現していきます。

 

語られてこなかった新たな都市像が浮かぶ
「渋谷の高層ビルを集めた本を作りました。よく見てみると電気がついているフロアとついていないフロアがあって、ホテルなら『やっぱり上の階が人気なのかな』とか、オフィスビルなら『この階の人は夜遅くまで働いているんだな』とか、ビルを利用する人の背景が見えてきて面白い」「渋谷はお店がたくさんあるから、看板を集めてみました。撮った写真を並べてみたら、よく目にするのに読み方がわからないお店がたくさんあることに気づいた。実は、文字として認識していなかったのかもしれない。普段何気なく歩いている時は目にもとめてなかったな」完成した「ZINE」とともにそれぞれの気づきを発表。これまで語られてこなかったような渋谷の街のリアルな姿が浮かび上がってきました。

 

次回は、センサー技術を通して街を分析する
都市体験を自分なりに解釈し、読み物として表現することを通じて、様々な人・ものが共存する街の多面的な面白さが改めて見えてきた今回。次回は、センサー技術を活用し、湿度、硬度、風速など、様々な測定値から都市をとらえていきます。人間の感覚を超えた「目に見えない要素」を通して、街の見え方はどのように変わっていくのか。今からとても楽しみです。

 

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