「ものがたりとものづくり」 第4回 エスキス制作①
木の「ものがたり」からプロダクトの形を考える
「ものがたりとものづくり」はプロダクトデザイナーの岩元航大さんが講師を務める全11回のクラス。カリモク家具の木材に触れながら、生徒の皆さんも1人のプロダクトデザイナーとして制作や発表をしていきます。
前回の授業は、工場ツアーで実際に触れたり学んだ木材のなかで、「自分が特に気になった木の特性を調べてくる」という課題の発表。素材についての理解を深めていきました。
ここからは、実際にそれらの素材に手を加えていく前に、スケッチを重ねながらイメージを固めていくための「エスキス」にとりかかります。そのために出された課題は、1人15個のアイディアを書き出してくるというもの。木の特性、木が持っている「ものがたり」、自分自身が惹かれる造形。様々な角度から考えたり、実際にスケッチを重ねていくことで、これからつくっていくプロダクトの輪郭をつかんでいきます。
1人のアイデアをみんなでひろげて深める
生徒の皆さんのアイデアは合計70以上。それらをすべて一度、みんなで共有していきます。
「木言葉の『独立』にちなんでナラのランドセル」「クリは『勝栗』など勝負事への縁起がいいものとされているので、クリの名刺入れ」「漆は材木として利用されることが少ないので水筒」など、樹種の特性からもインスピレーションを受けて様々なアイデアがみられます。また、「街路樹として人々に癒しを与えていたケヤキを机にして、趣味のプラモデルをしながら僕も癒されたいな」と、木と自分自身の「ものがたり」を重ねていく姿勢もみられます。
それぞれのアイディアに対して、「名刺入れといっても、例えば、ユニークな名刺の出し方ができる形ってどのようなものだろう?そもそも名刺交換ってしたことある?」「ナラの木にある『キクイムシ』の痕跡って、どう思う?プロダクトデザインにおいて邪魔な存在?それとも一つの個性として感じる?」など、岩元さんを筆頭に、その場にいるみんなから問いかけを重ねていくことで、それぞれの考えも深まっていくようでした。
木の「ものがたり」と自分の「ものがたり」
授業の後半では、アイデアスケッチを机一面に並べ、岩元さんと生徒の皆さんそれぞれで個人面談。みんなで共有しつつも、一人ひとりとじっくり向き合っていく時間も大切にしていきます。
そこで繰り返し確認されていくのは、それぞれの木が持っている『ものがたり』であると同時に、「自分が『これをデザインしたい』と思える理由はなんだろう?」という問い。「自分自身が腹の底からつくりたいと思えるもの」を対話のなかで、より深く探っていきます。岩本さんは、そこに「きっと木と自分自身の『ものがたり』が重なるところがあるはず」と言います。エスキスは、まさにそこを探り当てるための作業であるとも感じます。
エスキスは続く
どのようなプロダクトをつくりたいのか。つくるべきなのか。切ったりつなげたり磨いたりといった木材の実際の加工作業の前に、徹底的に考えていくエスキス。その工程の大切さが生徒のみなさんに感じられたように思います。次回も引き続きエスキスが続いていきます。