REPORT

「遊びのアーバニズム実践学2022」第4回 建築や都市計画に「遊び」を取り入れる

「遊び」を通して建築や都市計画を考える意味
街を舞台に、「遊び」を通してリアルな都市空間や建築デザインを学んでいく「遊びのアーバニズム実践学」。建築家の海法圭さん、津川恵理さん、建築リサーチャーの川勝真一さんからなるプロジェクトチーム「Town Play Studies」と、東京理科大学理工学部建築学科西田研究室の学生の皆さんとともに、全10回の授業を通して「遊び」からこれからの都市や街のあり方を考えていきます。

「遊び」を通して様々な視点から都市を体験してきたこれまでの授業。1月24日(火)の第4回では、講師3名による特別講義が行われました。講師の皆さんそれぞれの仕事の様子に触れることで、これまでの授業での体験がどのように建築や都市計画につながっていくのかを改めて捉え直していく機会となりました。

 

都市と能動的に関わることは可能か
それぞれが建築家やリサーチャーとして活動しながら、「Town Play Studies」というプロジェクトチームとしてこのクラスを主宰する講師の皆さん。今回の授業では、3名それぞれの実際の活動を通して、「遊び」と建築や都市計画の通じるところを明らかにしていきました。

海法さんによる、新潟県上越市に設計された雪室「ユキノハコ」。その地域で育った木を建築の素材として使用したり、環境を見つめ直す時代に注目されつつある雪室のシステムやそれらを通した暮らしのあり方を学ぶことのできるような空間を作っていたり。そういった雪室としての機能を超えた様々な創意工夫の中には「建築が建てられる環境を活かし、その街や自然のサイクルにも良い影響を与えるような建築を生み出したい」というご自身の想いがあると言います。

津川さんによる、風船を使った都市実験。ニューヨークの歩道にたくさんの風船を設置し、それらと対峙した時の歩行者の反応や突発的な動きから、人の内面的な個性を引き出すことを目的とされています。「電車に乗っていても歩いていても、みんなスマホばかり見ている。与えられたデバイスに依存して、目の前で起こっていることに全く意識が向いていない。そういった状況に危機感を感じて、警鐘を鳴らしたいと思った」と、津川さんは言います。

川勝さんは建築リサーチャーとして、様々な人が建築や街づくりに関わる機会を展覧会やイベントを通して生み出していくような活動をされています。例えば、アーティスト「Graffiti Research Lab」とともに行われた京都の街なかでの参加型インスタレーション。プロジェクションマッピングの技術を活用し、ライトを使ってビルの壁面に誰でも自由に絵を描けるようにするというもの。そういった活動の背景には、「管理や規制が厳しくなり公共空間が不寛容になってしまっているからこそ、個々の自由な行動がある程度許されるような空間が必要だ」というご自身の課題感があると言います。

場所の特性を見出して使いこなす。目の前のものと能動的に関わり合う。誰もが参加できる。それらは建築や都市計画において重要な視点でありながら、まさにこれまでの授業で遊びを通して実践してきたことでもあるようでした。

 

遊びを通して対話が深まる
講師の方々による講義の後には、質疑応答の時間も設けられました。「自分だけが楽しむのではなく、都市を通して周りを巻き込んでいこうという精神を感じる。その視点を多くの人が持つことができれば、街はもっと楽しくなる。そのためにはどうしたらいいと思いますか?」「今の都市は、暮らす人よりも管理する側の方が強い立場にいる。コロナ禍によって規制が増えて、それがより加速されているようにも感じる。これからどうなっていくと思いますか?」と、生徒の皆さん。これまでの授業を通して、都市と深く関わり合ってきたからこその質問を通して、対話も深まっていきました。

 

次回は日本橋横山町・馬喰町を舞台にした「遊び」の演習
まちにおける様々な遊びを実際に体験しながら、遊びという行為が持つ都市計画・デザインにおける意味や意義を捉えていった前半4回の授業。次回からは、古くからの問屋街である日本橋横山町・馬喰町を舞台にした演習型の授業。ドラスティックに変わりつつあるまちのこれからを考えるために、エリアの可能性を最大化するような遊びを作り出すことに挑戦していきます。