「新しい演劇のつくり方(第2期)」第3回 戯曲づくり(原作の読み込み)
演劇に「かっさわれる」という体験が起点となる
「新しい演劇のつくり方」は昨年度に続いて開講となる演劇のクラス。今年度は演劇カンパニー「チェルフィッチュ」を主宰し、このクラスの総合ディレクターを務める岡田利規さんによる『三月の5日間』を原作とし、中高生である生徒の皆さんが新たな演劇作品を戯曲からつくっていきます。
1月22日(日)の第3回授業は、講師の笠木さんと共に、これからの戯曲づくりの核となる要素をさらに探っていくために、それぞれの『三月の5日間』への心象を深堀していきました。
なぜ「かっさわれた」のかを考える
前回の授業で笠木さんから出された課題は「『三月の5日間』のどこに『かっさわれた』かを考えてみる」というもの。それぞれが印象に残ったシーンや登場人物などを発表。笠木さんはその都度、なぜ「かっさわれた」のか、そのポイントを一緒に探っていきます。
「ヤスイくんとイシハラくんの会話は話が噛み合わないまま、どんどん次の話題に移っていく。今の人たちはこんな会話をよくしていそうだなと思った」「私も普段からそういう会話をしていると思う」「ミッフィーちゃんも、全部自分で完結している。共感してもらおうっていう気持ちが見受けられない」「とはいえ、ミッフィーちゃんが、一番自分の言葉で喋っていると思う」と、生徒同志の会話も重ねられていきます。それらの会話を見守りながら、笠木さんも時折キーワードを抽出して投げかけていきます。「コミュニケーションが成立していそうでしていないという状況ってありますよね。ディスコミュニケーションという言葉を知っていますか?」
生徒のみなさんそれぞれの感覚に共通していきそうなキーワードが提示されると、話し合いもより活発化していきます。何を表現していきたいのか。それをなんとなくでも掴み初めていくような時間でした。
「かっさわれた」ということと「戯曲を書く」ということをつなげる
生徒のみなさんが表現していきたいものの一端を掴みつつある感触を受けて、これから実際に戯曲を書き進めていくためにも、ここで世界の代表的な戯曲のあり方も確認していきます。表現の核となる部分、そして、それを表していくための方法論。大まかにでも、その両方を少しずつイメージしていきます。
セリフに加え、ト書きで役者の立ち居振る舞いを詳しく描写するベケット。逆にト書きを絞り、セリフを中心とするチェーホフ。はたまたト書きのみで書き上げる太田省吾など。様々な劇作家の作品が例に挙げられます。最後には、「形のない心の動きを文章にして、戯曲にして、演劇にしている。いろんなスタイルがあるけれど、みなさんにとって自分の中で感じたものを書くことがどういうことなのか考えてみてほしい」と、笠木さんからはこれから戯曲を書き進めるためのメッセージが贈られました。
実際に書き始めてみる
次回授業からは班に分かれての戯曲の執筆がスタートしていきます。同時に、「よりみんなのことを知りたい」という声もあがり、生徒の提案から谷川俊太郎「33の質問」を参考にしたアンケートも行うことになりました。今回制作する戯曲がそうであるように、授業そのものも、それぞれのアイデアを織り交ぜながら進んでいくことがとても印象的です。