REPORT

「この町を大事に思えるキオスク」第11回 最終発表会

これまでの成果を発表する最終プレゼンテーション
「この町を大事に思えるキオスク」は、世界的建築家・伊東豊雄さんが主催する建築塾「伊東建築塾」による建築のクラス。講師には、PERSIMMON HILLS architectsの廣岡周平さんとKASAの佐藤敬さんをお招きし、11回の授業を通じて実際に暮らしのなかにある売店「キオスク」のアイデアを実現していくことを目指します。

昨年10月より開講したこのクラスもついに最終回。2月26日には、生徒の皆さんそれぞれがこれまでの授業を通して検討を進めてきた「この町を大事に思えるキオスク」の最終発表会を行いました。講評者には、講師の廣岡さんと佐藤さんに加え伊東豊雄さん、百田有希さん、そして今回の創作の舞台となる渋谷川沿いエリアの運営を担う東急株式会社の皆さんをお迎えし、生徒一人ひとりが作り上げた模型を手にこれまでの成果を発表。全14作品の中から、最優秀賞と講師陣それぞれからの個人賞が選ばれました。

 

講師陣の議論も白熱
「様々な地域の人が訪れ、それぞれの地元料理を振る舞うことのできるキオスク。いろんな地域の魅力が交差するような場所にするために、作り手とお客さんとの間に壁を立てずに1台の大きな長テーブルをみんなで囲むような空間にしたい」「渋谷川沿いの風景を彩りながらお花を売ることのできるキオスク。お客さんが好きな植物を自分で摘んで、その植物でブーケを作ってもらえるようにして、買うことそのものを楽しんでもらえるようにしたい」「川の上にふわふわと浮かんでいるような、街のシンボルであり情報発信スポットになるキオスク。中はポップアップストアになっていて、行くたびに誰かの好きなものをみることができたら、この場所を訪れることが楽しみになるのではないかな」など、生徒の皆さん一人ひとりが模型やスケッチなどを使って、自分のアイデアを発表していきます。

それぞれに対して、講師のみなさんはじっくり向き合います。これまで見たこともないような発想を広げていくこと。様々な制約もありながらもその実現に向かっていくこと。一見矛盾しているようなことを臨んでいる建築家という立場だからこそのフィードバックが連なっていきます。「大きさの判断というのは、建築家にとってとても大切なもの。このアイデアが実際に町にできた時に、本当にこの大きさでいいのだろうか」「このアイデアが人の行動を促すとしたら、本当に人はそのとおりに行動してくれるだろうか」「ただ人が集まるだけだと、コミュニティにはならない。本当に町にとってのコミュニティを考えるとしたらどのようなものだろうか」と、講師同士の議論も白熱。生徒の皆さんも、目の前で繰り広げられる建築家同士の議論の迫力を、緊張の面持ちで肌で感じていきます。とはいえ、「これだけ僕たちの議論が盛り上がるということは、皆さんのアイデアに人を動かす力があるということですよ」という伊東さんのコメントに、笑顔が溢れていました。

発表終了後には、全14作品の中から最優秀賞と講師陣それぞれからの個人賞の選出。プロの建築家がそれぞれの判断基準や作品に対する評価をオープンにしながら議論し、賞を決めていく様子そのものも、プロの建築家の方々の仕事の流儀や風景をみているようでした。(生徒の作品の様子はこちらのページから是非ご覧ください)

 

建築を通して人と人の関係を作ること、「町を大事に思う」こと
最後には、講師の方々から生徒の皆さんへ、半年間に渡って開講された授業を締めくくるようなメッセージが贈られました。

●伊東豊雄さん
「自分のやりたいことをやりたい場所でやる、ということがみんなできていたのがよかった。プレゼンにもそれが現れていた。どのように人と人との関係を作ることができるだろうか。ということを自分もいつも考えている。今日の提案はそれが実現できるのではないかなと思えてハッとした。そして、渋谷には商いしかないと思っていたけど、生活がちゃんとあるんだということに気づけた。商いを考えると、訪れて来る人のことばかりに目を向けてしまうけど、商いをやる側のひとのことを考えるとその街での生活が見えてくる。それも僕にとっての発見でした」

●佐藤敬さん
「半年間の授業を通して、皆さんの素直さに僕の方が学ばされました。自分ならこういうことやりたい、というアウトプットの形として建築があるというひたむきな姿に、自分も背中を押されるような感覚がありました。日常の小さな気づきから都市スケールの問題が地続きにつながっているということをアイデアから感じられて良かったです」

●廣岡周平さん​​
「自分がこうやりたい!という気持ちが感じられてよかった。何かとの出会いを通して人生が変わるという瞬間がある。それは人だけでなく、ものでも、風景とでも起こりうると思います。何かの始まりには必ず出会いがある。そういう場所を、建築を通して生徒の皆さんそれぞれが作ろうとしていったということがすごいこと。自分の案に満足できなかった人もいるかもしれないけど、今回の授業を通してそれぞれが考えたことを、ぜひ周りの人にも共有してほしい」

●百田有希さん
「考えていることを形にすることのエネルギーを皆さんからすごく感じました。それは、建築をやっているときに1番大切なものだと思います。建築を一つ考えるということは、その周辺の環境やまち全体のことを考えるということ。人間の営みを考えること。街の魅力や歴史が、建築を作ることで浮かび上がってくる。だからこそ、建築は人生をかけてつくるに値するものだと僕は思っています。一人でも多くの人にその喜びを感じてもらいたいなと思います」

●吉澤裕樹さん
「中間発表からアイデアがブラッシュアップされていて感動しました。私たちは、渋谷川沿いにエリアの運営を担う立場として、いつも理想と実現性の間を行き来しています。そして、そのなかでより良いことを実現していくことが腕の見せどころ。今回、皆さんが実際にこの場所を歩いて感じたことを通して発想したアイデアに触れ、すごく色々な発見と収穫がありました。法律のことなど、様々な条件をクリアしていく必要がありますが、皆さんの熱意に触れて、アイデアを実現していきたい!と思うことが出来ました」

 

アイデアを街に広げていくために
「伊東建築塾」によるこれまでのクラスでは、生徒が考えたアイデアを実際の家具や、1/1のモックアップとして実作するところまで進めていきました(制作された家具は、受付カウンターとしてGAKUで利用されています)。今回も何かしらの形で、生徒の皆さんのアイデアを実現できないか。そのような想いでこれから検討を進めていきます。今後の展開についてもぜひご期待ください。

 

「この町を大事に思えるキオスク」クラスページはこちら

 

2020年度クラス「自分の興味をカタチにする」

 

2021年度クラス「世界のどこでも自分の家になるモバイルハウス『動く家』」