REPORT

「グラフィックデザインのパトス」第4回 編集としてのデザイン(後半)

50ページ以上の「日本橋散歩ビジュアルブック」
様々なグラフィックデザイナーとともに、手を動かしながら全11回の授業を通して視覚表現を学んでいく「グラフィックデザインのパトス」。2月25日は、アートディレクター・脇田あすかさんによる授業の後半です。

前回の授業では、アートブックを中心とした脇田さんご自身のこれまでの創作物に触れ、デザインにおける編集の重要性を体感していきました。それらを踏まえ脇田さんから提示された課題は、授業の舞台である日本橋の街をテーマにした「日本橋散歩ビジュアルブック」を作り上げること。2週間という限られた期間の中で、日本橋の街をフィールドワークするところから生徒の皆さんそれぞれが50ページ以上の本作りに挑戦。今回の授業では、その課題発表が行われました。

 

街の歩き方も、本への落とし込み方も、編集
発表ではそれぞれが作り上げた作品とともに、その中での創意工夫が語られます。

「街にあった特徴的な名前のビルに着目したビジュアルブック。あえて写真と文字を白黒にして同じフォーマットで淡々と並べることで、ビルそのものの面白さが強調されるようにしました」「日本橋の5つの地区それぞれの特徴を紹介するビジュアルブック。地区ごとにイメージカラーをつけたりページの紙の大きさや形を変えたりすることで、それぞれのキャラクターを表現しました」「私の街歩きを追体験できるビジュアルブック。本に、街でフィールドレコーディングした音源をQRコードで載せることで、視覚だけではない情報から、街の様子を感じてもらえるようにしました」と、生徒の皆さん。同じ街をフィールドにしているからこそ、一人ひとりの着眼と見せ方によってそれぞれ全く異なった街の風景が生まれていき、編集の面白さと可能性を改めて体感する機会となりました。

 

作り切ることで初めて見えてくるもの
「全員が本を仕上げてきたということに、とてもびっくりしています。短い時間の中で本当によく頑張った!ちょっと時間が足りなかったとか、製本がうまくいかなかったという人も多いと思う。でも、それは実際に作り上げたからこそ発見できたことだから、ぜひ自信を持って欲しい。今後の制作の糧にしてもらえたら嬉しいです」と、脇田さん。

生徒の皆さんからは、「50ページを作るのは本当に大変だったけど、挑戦できてよかった。改善点は色々あるけど、完成できたことが自信になった」「制作のために色々な本屋さんに行ってみたり、実際に自分でも手を動かしたりすることで、本ってこんなに奥深くて面白いんだと改めて感じることができた」といった感想も。ほとんどの生徒にとって、今回が初めての本作り。前回の授業で脇田さんが言っていた「手を動かし続けることの大切さ」をそれぞれが身を持って感じつつ、一冊を作り切ったことの自信と手応えを掴んでいったようでした。

 

次回は、自分を、デザインを「拡張」するための方法論を学ぶ
次回はビジュアルアーティストの平野正子さんによる初回授業。「拡張としてのデザイン」というテーマのもと、平野さんのこれまでの創作とそこに至るまでのプロセスやインスピレーション源をご紹介いただきながら、アウトプットする上でのイメージの広げ方やリサーチの方法論を学んでいきます。

 

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