REPORT

「この町を大事に思えるキオスク」第3回 エスキス①


「エスキス」でアイデアを形にしていく
「この町を大事に思えるキオスク」は、世界的建築家・伊東豊雄さんが主催する建築塾「伊東建築塾」による建築のクラス。講師には、PERSIMMON HILLS architectsの廣岡周平さんとKASAの佐藤敬さんをお招きし、11回の授業を通じて実際に暮らしのなかにある売店「キオスク」のアイデアを実現していくことを目指します。

創作の舞台となる渋谷川沿いでのフィールドワークを経て、「商い」の空間のリサーチの課題が出された前回の授業。11月6日(日)に開催された第3回では、それらのリサーチ結果の発表とアイデアを書き出していく「エスキス」に挑戦していきました。

 


生徒それぞれの身近な町で「商い」をリサーチ
まずは、生徒の皆さんそれぞれが取り組んできた課題の発表。お題は、それぞれの生活圏内にある街から「商いの空間や商いに関する場所、商いを通して生まれている空間」をリサーチするというものでした。今回はそれぞれのリサーチの結果を写真とともに発表していきます。

例えば、「路上に卵の自動販売機。売り方が違うだけなのに、思わず買ってみたくなりました」という発見に対して、「買うこと自体が楽しくなったり面白がれたりすることは大切。つまり、どのような体験を生み出せているか?という視点は欠かせません」と。「道路沿いのレモネード屋さん。奥行きが狭くて横に広い形をしているから、道から店内全体の様子が見える。お店の内装がとても可愛いから、入ってみたくなりました」という発見に対しては、「狭いからこそ、町全体も含めてお店みたいになっている。空間全体を使いこなせているか?という視点も欠かせません」と。一人ひとりの発表に対して、講師の方々からはこれからのクリエーションに必要な観点とともにフィードバックが贈られました。

ただものを売り買いするだけでなく、売る人や買う人の喜びになっているという「商い」のあり方。その蓄積が、「町を大事に思う」ということに繋がっていくはず。そういった営みを、建築を通してどのように後押しできるのか。「この町を大事に思えるキオスク」という授業タイトルに込められたテーマを、リサーチやフィードバックを通してそれぞれが改めて感じられたようでした。

 



「エスキス」で、手と頭を共にはたらかせる
創作の舞台となる渋谷川沿いでのフィールドワーク。それぞれの身近な町から「商い」の空間のあり方を探っていったリサーチ。これまでのそれらの学びを活かして、「この町を大事に思えるキオスク」をいよいよ具体的に考え始めていくために「エスキス」を進めていきます。今回の授業では、まずはアイデアをスケッチで表現していきました。次回以降の授業では、立体的な形にすることでアイデアを検証したり他者に伝えていくために、中間発表に向けて小さな模型をつくり上げていくことに挑戦していきます。

建築という仕事は、頭の中のアイデアを形にするもの。頭をできるだけ柔軟にしながら、かつ本質をつかんでいけるようにすることも求められますが、その自由なアイデアを目に見える形に落とし込んでいくことも同時に求められます。「エスキス」という工程では、その両面がともに磨かれていきます。「アイデアが固まっていなくても、まずは手を動かしてみよう。頭の中で思い描いているものを書き出してみると、そこからアイデアがどんどん広がっていく。それがスケッチの面白いところです」と、手と頭を共にはたらかせることを示すようなアドバイスが印象的でした。また、「ここはどんなイメージ?」「ここはどういう狙いがあった?」と、実際に紙に落とし込むことで、講師の方々と生徒の会話のあり方もより具体的なものになっていくようでした。

 


次回はスケッチも進めつつ、模型制作へ
次回の授業でも、生徒それぞれが自分自身のアイデアと向き合いながら、引き続き「エスキス」の作業を進めていきます。「スケッチである程度アイデアがかたまってきたら、模型制作を進めていきましょう。模型は、スケッチをもとに制作していきますが、手を動かしていくうちに新しい発想が生まれてアイデアが変化していくかもしれません。でも、それはとても良いこと。変化のプロセスそのものも重要なので、ぜひ保管しておきましょう」と廣岡さん。「とにかくいろんなアイデアや方法をたくさん思い描いてみることが大切。熱中してたくさん手を動かしたら、少し冷静になってそれらを見つめ直してみると、自分の実現したいものが少しずつ定まってくるはずです」と佐藤さん。授業の終わりには講師のお二人から、これからの制作に向けてのメッセージが贈られました。

 

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