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「世界のどこでも自分の家になるモバイルハウス『動く家』」生徒作品一覧

世界的建築家・伊東豊雄さんが主催する「伊東建築塾」による「世界のどこでも自分の家になるモバイルハウス『動く家』」。講師には、o+hの百田有希さんと大西麻貴さん、PERSIMMON HILLS architectsの廣岡周平さんをお招きし、2021年10月から2022年3月の5ヶ月間にわたる授業を通して、生徒一人一人がモバイルハウスを構想していきました。その後、カリモク家具株式会社との連携により、最優秀賞に選ばれた1点が実物大、その他の全13作品が木製のミニチュアとして実現。2022年8月8日(月)~12日(金)の期間中には「Karimoku Commons Tokyo」にて、それらの展示会を開催しました。

ここでは、生徒が授業内で制作した模型と完成した作品、そして生徒自身が書いた作品キャプションをご紹介します。



「The ever-changing house」 by 岡部 莉子
モバイルハウスは、普段の家とは少し違って床・壁・屋根と言う区切り方をしなくても良いのではないか、それがこの家の原点です。私は持ち運んでその場で展開する螺旋状の空間を作ることで、モバイルハウスの可能性が広がり面白いのではないかと思いました。また、落ち着けて家族や友達と一緒に過ごす場所と自分のプライベートの空間も大切にできる空間のメリハリを意識して作りたいとも思いました。そうして、伸縮性のある家を考えていくうちに折り曲げ方で空間の変化が起きて畳むこともできるジャバラの可変性に惹かれ、この形にしました。このモバイルハウスの家具は壁の角度に合わせて作られていて、折りたためて伸縮性がある蛇腹の性質を生かしつつも内部を自由に変えることができる構造になっています。モバイルハウスとは何か?この家が私の見つけた答えです。

 



「動くアトリエ」  by 友田 あさひ
僕は絵を描くことが好きで、森などの自然豊かな場所をはじめ、いろいろな場所に持ち運び、そこで絵を描ければいいなと感じたことから「動くアトリエ」を作ることにしました。すべて同一の円から形を展開できるようになっていて、移動させるときは簡単に折り畳むことが出来ます。形を円にしたのは柔らかいイメージのモバイルハウスをつくりたかったのと、自然の中にあったときに周りに馴染むようにしたかったからです。また、パレットをイメージした形にもなっています。3つの窓の意味としては、カメラのフレームのように、その窓から切り抜かれた景色を描きたいと思ったからです。

 



「Mobile Concert」  by 秋田 未奏楽
みなさんは音楽、特にクラシック音楽を聴くときの場所はどこがいいと考えますか?恐らくコンサートホールと思う人が多いでしょう。私は、音楽をホールで聴くのも良いと思いますが、音楽を聴くためだけに造られた構造を持つコンサートホールだけではなく、思い切って建物の外、例えば森の中で聴くこともまた1つの楽しみ方だと考えています。その理由として、音楽を周りの空気、風の音や森の音、ひいては景色などと一緒に楽しむことで、またいつもと違った音楽の楽しみ方を体感出来ると感じたからです。この作品の利点としては、この模型の構造に囚われないということです、私の想像としてはこれは例えばハンモックのような、丈夫な布のような素材を使い主に音の反射板のような役割としてたいと考えています。その理由は3つあり、1つ目は、クラシック音楽で主旋律を奏でるような楽器はあまり音が大きくなく音響設備の整ったコンサートホール内ならまだしも、音の拡散しやすい屋外で演奏するとなると、何かしらの音の増幅が必要です。2つ目の理由として、従来のコンサートホールと違って色んな体勢で、例えば先程の反射板で寝転がって聴くもよし、森の中なら切り株に座ったり木に寄りかかったりして聴くもよし、といった色々な楽しみ方ができるからです。3つ目の理由として、自転車で引っ張って持ち運びをするといったこのテーマにとって、軽い素材であり手軽に移動ができるということに合っていると思ったからです。以上が私の考えたモバイルハウスです。

 



「Petals」 by 中浜 瑛理香
‘Petals’は「花びら」という意味で、その名の通り、花びらの形をしたものが積み重なって花のような形をしています。これはもともとプロペラを参考とした、耐久性も考慮した形となっています。一つ一つの花びらはそれぞれパーツとなって分離しており、自由に動かすことができます。つまり使う人によって自由に空間を創造し、複雑な形の中で自分のお気に入りの場所を見つけることができるのです。このPetalsでは具体的には本を読む、音楽を聴く、または釣りをするなど、自分なりのリラックスな時間を過ごすことができます。森林など大自然の中の、静かな湖や池の上に浮かんでいるイメージです。よって、全体的に自然と調和するような形、色味を意識しました。

 



「Flex sheet house」 by 鈴木 乃天
この家は木の上で暮らす家でピラミッド状になっており、全面に窓が開いているため、360度森の景色を楽しめる家です。特に紅葉で周りの赤い景色が見える秋などを楽しめます。この家は気の中で隠れたような生活ができ、秘密基地感で非日常も楽しむことができます。この家は山の上で暮らせる家です。家の構造はアーチ型であり、寒い冬や高度が高く気温が高い山で暮らすときに暖かい空気の循環に適した形です。家は3方向にガラス張りで開放されていて、天井が高いため、広々と生活できます。あたりが真っ白な雪山の冬や紅葉で真っ赤な秋桜で鮮やかな春などの季節を満喫できる家です。この家は海辺で暮らせる家です。風が抜ける構造になっていて夏の暑い日差しをしのぎ、海の風を感じリラックスできます。間にハンモックをつるせば最適なセットアップになります。天候次第で開閉可能で風が強い日は閉めることができます。夜になれば天井のタイルも抜けて、ビーチで夜空の星を楽しんで海の音を聞きながら夏を感じることができます。

 



「Hexágono(エクサーゴノ :六角形)」 by 山本 杏菜
大きな六角形状の浴槽のような形で、6つに分けて大きな椅子や小さめのテーブルとして使ってもよし、一つにまとめて生活空間として使ってもよしです。中心に傘を差すことで屋根として使うこともできて、傘の開き具合によっては他人と生活を共有するスペースにも自分一人だけが静かに生活するスペースにもなり…と空間そのもののイメージが変わります。各ブロックには収納スペースがあり、前述の傘だけでなく発電機や飲料·食料品、調理器具なども入れられます。いろいろなものを収納するため素材は軽くて強いものがいいなと思い、過ごしやすさと馴染みもある木を使うことを考えました。

 



「ocean is under the house」 by 齊藤 世甫
海の上でぷかぷかと浮かぶ休憩場所。形はお茶碗のようになっていて、底はガラスでできている。大きさは3m×3mぐらいで、人が三人ぐらいいることを想定して設計した。想定した時期は夏で、熱の吸収を防ぐために色は白にしており、太陽の光が上から差し込んだりして海で冷めた体を温めることがでるようになっている。壁には滑らか凹凸があり座ったり寝たりすることができ、リラックスに最適である空間である。粘土で模型を作ることによって様々な凹凸を表現している。この空間は、釣りや魚を見ることもでき、ガラスを覗くと海の中がきれいに見えるようになっている。形がお茶碗の形になっていることから、向かい合って話したりすることができ、コミュニケーション向上にもつながる。

 



「包み込まれるみんなの家」 by 高松 隼也
誰でも気軽に立ち寄れる空間を創造した。当初は、キューブの面を展開して多方向から人々が立ち寄れる空間を目指していたが、たしかにキューブを展開すると、立ち寄りやすいものの、立ち寄ったあと、あまりそこが居心地が良い場所とは思えなかった。というのも、キューブ型にしてしまうと、内部がカクカクした幾何学的な四角に囲まれてしまうと感じたからだ。もっと立ち寄った人が、包み込まれるような空間を創造出来ないだろうかと考えた結果、蓮の花の開きかけのつぼみのような有機的な形にすることで、気軽に立ち寄れてかつ、人々が包み込まれてリラックスできる空間を創造することができた。

 



「光波の片鱗」 by 櫻井 琴
車輌上のコンパートメントは、一方の側面から天井まで湾曲したアクリルで覆われていて、室内から広範な外部視界を確保しています。この車輌は、遠くの風景を横目に仕事をしたり、夜空の星を眺めながら寝たりすることができます。昼の日差しはアクリル外部のシャッターで調整が可能な上、時間によってランダムに動作させることも可能で、予測不可能な日光の入り込みを楽しむこともできます。この窓からは通気ができませんが、横の壁がドームのように90°まで開閉できるようになっており、開口部分は蛇腹構造の網戸を装備しているので、虫の侵入を防ぎながら、半ドーム型の外と壁の境界線が無くなったかのように風を通すことができます。また、出入口はアクリルと反対側の壁面にあり、ガラス張りのドアが普段は小さな窓として使用出来ます。ドアの下部にはベランダが装備されており、ベランダも下に下ろすことでベンチに変わり、収納式の階段も降ろされることで家の出入り口にもなります。

 



「かさなる自習室」 by 兼清 悠祐太
受験生である僕は、旅をしながら環境や気分を変え、勉強できる場にしたいと考えた。空間のなかに机があるのではなく、机そのものが大きな空間になっているイメージ。通常、勉強する面が一つの机とは違って、一つの机の中に勉強できる場所がいっぱいあればいい。椅子になるところ、ノートを広げるところ、本棚のように使う場はそのときによって変わってもいい。そこで連想したのは、幾つもの分岐がある高速道路のジャンクション。何段にも重なり渦を巻く高速道路のジャンクションに、もしも巨人が腰かけたとしたら、机としたところが別の日には椅子になり、また別の日には足置きになるかもしれない。いくつも机と椅子と床が重なった空間だ。

 



「出会いを育むかまぼこハウス」  by 田原 陸人
この作品は「人を招き、人と人の繋がりを作る」というのをコンセプトに制作しました。様々な場所に移動できるというモバイルハウスの特徴を生かし、移動した先々で新たに出会った人とのコミュニケーションを生む、そんな空間を作ろうとしました。このような空間を想像した時に、僕はコンセプトモデルとしてお茶室を思い浮かべました。全員がその空間にいる時は、同じ目線や立場でそこに集まって親交を深めるという形を取り入れています。形のモデルとなったのはかまぼこで、大小違う大きさのかまぼこ型が徐々に連なって形を形成し、丸みを帯びたフォルムは人の目を惹きつけやすいと考えました。移動の際にはマトリョーシカのようにコンパクトな形に変形します。小さいかまぼこ型から腰を低くして入っていくことでこの空間では身分など関係なく人と関わることができるという茶室のにじり戸に似た構造をとっています。正面からのぞいてみると道が先まで続いているように見え、人との交友を深めていくごとに、互いの心が段々と開けていき、またそれと同時に空間も道を進むにつれて広くなって行き、最終的に人と空間が一体化する、というそんな家を作りました。

 



「On The Move」  by 髙橋 正興
自転車で動ける家という制限の中でできるだけ家としてありながら好きなことができるようなスペースを作ろうとしました。家族や友人がいつでも交流しやすい構造を考えて、どこにいてもみんなの顔が見える家、また移動できるということを考えながら、動きながらも外にいる人が見えるような構造にしました。さらに、外で一緒に料理したり、一緒に食べることもできるようにしました。



「八重立~やえたつ~」 by 平田 里帆
モバイルハウスをつれて、自由気ままに旅をして、気に入った場所で一人落ち着いて好きなことをしたい。読書をしたり、星を見たり、写真を撮ったり。自然の中でものづくりがしたい。これらを実現するために、中間発表時には三層構造のデザインで、2階に上るはしご、もたれても座ってもいい曲面のイスや星を眺める天窓等を配置しました。「家具っぽくも家っぽくもあるところが面白い。」「もっと連続性をもたせるといい。」とのアドバイスを先生方にいただき、最終発表時にはうねる形を前面に出して、1枚の紙を折り重ねて作ったようなひとつなぎの空間をデザインしました。落ち着いて好きなことができる、やわらかい空間ができあがりました。

 



「モバイル・アイランド」 by 常山 璃菜
このモバイルハウスは、世界中を旅して色々な国の人と話し、その国の文化を感じたいという願望から生まれた。海に囲まれた「島」は往来の中継点であり、また「島」の浮遊性は自由でどこへでも行ける(「モビリティ」)を表す。そのため、壁がベッドや机、椅子にもなり、狭いスペースながらも多様な経験ができる仕様にした。外見は日本の六角堂をイメージ。また、六面だからこそ四方八方から交流しやすいという利点もある。ハウスの中心は人が一人立てる広さで、集まった人全員に同時に対応できる。このように出身国をイメージしたモバイルハウスは、自転車で引いて外国に行った際に自分のアイデンティティをアピールできるし、もし他の国を模したモバイルハウスが一同に集まれば活発な交流の場にもなるだろう。

 

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