「世界のどこでも自分の家になるモバイルハウス『動く家』」第11回 最終発表会
これまでの成果を発表する最終プレゼンテーション
世界的建築家・伊東豊雄さんが主宰する「伊東建築塾」による「世界のどこでも自分の家になるモバイルハウス『動く家』」。講師を務めるのは、o+hの百田有希さんと大西麻貴さん、PERSIMMON HILLS architectsの廣岡周平さんです。
昨年10月より開講したこのクラスもついに最終回。2月27日(日)は、生徒それぞれがこれまでの授業を通して構想したモバイルハウスの発表会を開催しました。講師の百田さん、大西さん、廣岡さん、そして特別講師の伊東豊雄さんに向け、生徒一人ひとりが作り上げた模型を手に、これまでの成果を発表。最優秀作品と先生方それぞれが贈られる個人賞が決定しました。
建築家の世界を垣間見る真剣な講評会
「中間発表の時はいろんな要素を詰め込み過ぎてしまっていたけど、改めて考えた時、本当に自分がモバイルハウスでやりたいのは絵を描くことだと気づいた」「訪れた場所でいろんな人と交流したいけど、一人でもゆっくり過ごしたい。そのメリハリがつけられるような形にしました」「森の中でクラシック音楽を楽しむためのモバイルハウス。中間発表でのアドバイスを受け、音の響き方を意識したり、周りの木を活用して森全体に広がっていけるように家の造りを考えていきました」と、一人ずつ模型やスケッチなどを使って自分の言葉で発表していきます。
生徒それぞれの創意工夫に対して、「模型の造形センスが特徴的でそれをそのままいかしていくといいのかもしれない」「これは模型をつくるのが大変だったね」「これは本当にこのサイズでいいのかな」「自分の仕事でこのようなことをして失敗をしたことがある」など、講師陣一人ひとりからコメントが送られます。それらは多くの建築プロジェクトを経験してきているからこその率直で説得力のあるものだったり、それぞれの発想や工夫の可能性を見出したりしていくものでした。
発表終了後には、賞の決定です。なんと、生徒のみなさんの前で、講師陣の議論が始まります。どのような観点でこの作品がいいと思うか。真剣な眼差しや話し合いのなかで、判断基準を見出していきながら意見をまとめ上げていく様子そのものも、プロの建築家の方々の仕事の流儀や風景をみているようでした。
これどう作る!?先生も一緒に盛り上がれるということの凄さ
「講師陣が、これだったらこうするといいのでは!?こうやるとつくれるのでは!?と言いたくなることは凄いこと」と、伊東豊雄さんが言うとおり、講師の方々も生徒のみなさんと同じ創り手として、一緒に盛り上がっている様子がとても印象的。発表会の緊張感もありつつ、どこか連帯感も生まれていきます。最後には講師の方々からメッセージが贈られ、授業が終了しました。
「生徒の皆さんからいろんなアイデアが出てきて、改めて建築って面白いなと思いました。アイデアを出すときに『どうやって作るか』ということを考えずに作ってしまうことも多い中で、今回はそれぞれが『実現するにはどうしたらいいのか』ということを頭の片隅に置いて考えていたのが、案の切実さや力に繋がっていたように感じます」と、大西さん。
「僕たちは気づいたら24時間365日、常にどこかの建築物の中にいるよね。建築の仕事っていうのは、人の暮らしの豊かさや生き方に触れることのできる面白さがあると感じています。だから、この中に建築家を目指す人が一人でも多く生まれることを期待しています」と、百田さん。
「建築の仕事の中でアイデアを議論していく時とほとんど同じような熱量でみなさんとやり取りをしながら、年齢は関係ないんだなと改めて思いました。とても楽しかったし、非常に勉強になりました。みなさんが作り上げたものは、現役で活動する建築家へ刺激を与えるものになると思うし、建築を学んでいない人たちにとっても学びになるはず。そんなみなさんの作品に携われたことを本当に嬉しく思います」と、廣岡さん。
「小学生に向けて建築塾をやってきましたが、大人になるにつれて自由な発想や夢が抜け落ちていくことに危機感を感じていましたが、今回の中高生の発表をみて安心しました」と、伊東さん。建築教育の領域でも長年活動をされてきた伊東さんの言葉にGAKU事務局も勇気づけられました。
最優秀作品の実制作に向けて
「伊東建築塾」による昨年度の「自分の興味をカタチにする」では、生徒が考えたアイディアを実際の家具にするところまで、進めていきました(制作された家具は、受付カウンターとしてGAKUで利用されています)。今回のモバイルハウスもなんとか実現できないか。そのような想いでこれから検討を進めていきます。今後の展開についてもぜひご期待ください。