REPORT

「グラフィックデザインのパトス」第10回 贈り物としてのデザイン(後半)


クラスメイト一人ひとりへ向けた「贈り物としてのデザイン」の発表会
様々なグラフィックデザイナーとともに、手を動かしながら全11回の授業を通して視覚表現を学んでいく「グラフィックデザインのパトス」。

これまでの創作を振り返りながら、誰かへの贈り物としてのデザインのあり方や役割について考えていった前回。それらを踏まえて前原さんから提示された最後の課題は、「クラスメイト9名へ向けたポスターをつくること」。5月20日(土)の第10回は、その課題発表が行われました。

 


デザインを贈り物として捉えるから分かること
発表では、出来上がったポスターとともに、生徒それぞれがクラスメイト一人ひとりに対する想いや解釈を言葉にしていきます。同じ人を題材にしていても、個々人の視点によって全く異なったイメージが生まれています。

例えば、「いつも人の目をちゃんとみて話をしてくれる、真っ直ぐな人。最初は元気だなという印象だったけど、一緒にいるうちに繊細で真面目な部分があることを知り、色々な側面を持っているところを表現してみたいと思った」「日常の中の面白い出来事や風景を見つけるのが得意な人。自分なりの視点をちゃんと持っているところに惹かれていて、その部分を表現してみたいと思った」「偶然的に生まれる形や要素を取り込んで表現することが好きな人。自分にはその発想が新鮮で、作品がいつも楽しみだった。その制作方法を自分でも実践してみることで、本人のことを表現してみたいと思った」と、生徒の皆さん。実際のクラスメイトへ向けられたデザインだからこそ、発表をする方も聞く方も熱がこもっていく様子がとても印象的。グラフィックとして出来上がるビジュアルもさることながら、その着眼や感性そのものの大切さを肌身に感じます。

 


「誰かのことを想像する」という営み
「贈る相手のことを想像すると、その人が流れ込んできて、自分の感覚や表現の質感が変わっていく。それは自分自身の拡張でもあります。誰かのための贈り物を考えることと同じように、『誰かのことを想像する』ということが、デザインの基本だと思います。ふんわりでいいから、その気持ちを持って帰ってもらえると嬉しいです」と、前原さん。今回の実践を通して贈る側も贈られる側も体験をすることで、生徒の皆さんそれぞれのデザインに対する向かい方が深まっていっているようでした。

 


次回は、半年間の創作を振り返る
4名の講師の方々からの課題に取り組みながら、手を動かし続けたこれまでの10回の授業。次回の最終回ではそれらの創作物を持ち寄り、これまでの授業を振り返ります。一つひとつの課題に全力を注いでインプットとアウトプットを続けてきた半年間を改めて見つめ、その営みを言葉にしていくことで、それぞれの今後の創作との関わり方や展望を見据えていきます。

 

「グラフィックデザインのパトス」クラスページはこちら