「CO-CURATING」第3回 リサーチ
企画展を作り上げていくための「リサーチ」の方法論を学ぶ
「CO-CURATING」はキュレーターの髙木遊さんと岩田智哉さんによる、キュレーションをテーマとしたクラス。アーティストの方々とも交流を重ねながら、全11回の授業を通して生徒全員で企画展を作り上げていきます。
講師のお二人の活動を通して「キュレーター」という仕事のあり方に触れ、実際の企画展に足を運ぶことで、その可能性を体感していったこれまでの2回の授業。5月21日(日)の第3回では、このクラスを通して企画展を作り上げていくための「リサーチ」の方法を、生徒の皆さんそれぞれの「好きなアーティスト」を題材に実践していきました。
アーティストや作品への「好き」がほとばしる
事前課題は「好きなアーティストをリサーチしてくる」というもの。自分自身は、どのようなアーティストの作品に心が惹かれるのか。そのアーティストやその作品の背景にはどのようなものがあるのか。それらを生徒の皆さんそれぞれが事前に調べてきた成果を発表していきます。
例えば、「アーティストの髙橋銑さん。言葉にするのは難しいけど、誰もが感じたり考えたりしてるかもしれないことをテーマに作品を作っている人だと思う。元々、気になっていた人だったけど、今回改めて調べてみることで一つ一つのコンセプトや創作への想いに触れることができて、より好きになった」という声だったり、「写真家の齋藤陽道さん。著作に出会ったことをきっかけに齋藤さんの文章がとても好きになって、調べていったら写真家として活動されていることを知った。写真をみると、齋藤さんが見ていたり感じていたりする風景が自分と全然違う世界のように思えて、とても気になる。もっと作品を見てみたくなった」という声だったり。生徒それぞれの「好き!」という気持ちはほとばしっているものの、一方で、その「好き」という気持ちを言葉にしたり深めたりしていくことへの難しさも味わう機会となりました。
物事を深掘りしていくためのリサーチの方法論
生徒それぞれの発表を踏まえて岩田さんからは、それらをもとに「リサーチの方法論」を磨いていくためのポイントを確認していきます。「自分が感じているアーティストや作品の魅力を他の人に伝えていくためにはどうしたらいいか、という観点を持つことで、リサーチすべきポイントが明確になっていく」と言うように、「好き」という気持ちをエンジンに、誰かに届けるという役割を持つキュレーターとしてのあり方が改めて示されていきます。
「届けていく」ということを考えると、様々なボキャブラリーや歴史的な背景や社会への認識を深めていく必要があります。そのためには、「作品のステートメントやプロフィールだけではなく、インタビューやSNSも含めて徹底的に調べ上げていって、そのアーティストの共通する創作への想いや作品ごとの変化なども見出していくこと」も求められますし、「その中でわからない用語やニュアンスがあれば、それについても調べていくことで、そのアーティストや作品のことを多面的に捉えていく」ことも求められます。インターネットのみならず、実際に展示に足を運んだり、書籍にあたってみたり、詳しそうな人に尋ねてみたり。「好き」を起点にしながらも、キュレーターとしてどのように展示会に向かっていけばいいか。それを念入りに確認していきました。
次回は、アーティストリサーチの発表会
キュレーターとして展示会を企画し成立させるために、今の社会にとってその作品がどのような意味を持つのか。その展示会と作品やアーティストの必然的な関係性はどのようなものなのか。リサーチが自ずと展示会の企画やプランニング作業と重なっていきます。
そして、今回の授業の終盤では、展示会の全体テーマ案が岩田さんから発表されました(詳しい内容は展示会の詳細が決定するまで非公開となります)。次回は、岩田さんのアドバイスやそのテーマを踏まえて、それぞれがリサーチを改めて行いつつ、それらの手法を深めながら成果を発表していきます。
(写真・執筆:佐藤海)