REPORT

「グラフィックデザインのパトス」第1回 挨拶としてのデザイン(前半)

それぞれのパトスを掴む
様々なグラフィックデザイナーとともに、手を動かしながら視覚表現を学んでいく「グラフィックデザインのパトス」。1月9日(月)の初回授業を担当するのは、メイン講師を務めるグラフィックデザイナーの前原翔一さんです。「パトス(情熱)」と言うように、このクラスでは全11回の授業を通して、生徒の皆さんそれぞれが数多くのグラフィックデザインの制作に臨んでいきます。今回の初回授業では、前原さんのデザイン観に触れながら、前原さんとの対話を通して生徒の皆さんそれぞれがこれからの制作に向かうための自分自身の嗜好や核になるものを掴んでいくような時間になりました。

 

辿り着くまでの過程もその先も、デザインする
まず最初に、これまでに手掛けられたポスターの数々を持ってきてくれました。紙の質感や印刷もそれぞれのデザインにあわせて考えられている現物の迫力に生徒の皆さんも圧倒されます。一方で、「デザイナーはアウトプットを作るのが仕事だけど、その手前には関わる色々な人の想いや伝えたいことがあり、その結果としてデザインが生まれている。だからこそ、僕はデザインに行き着くまでの過程やその中での関係性づくりを大切にしたいと思っています」と前原さん。インパクトや意外性があるグラフィックに目がいくものの、それが生まれるための背景や関係性といった過程を重要視されているという言葉は、つくり手として参加されている生徒のみなさんに強く響いているようでした。

 

まずは「自分かも」を見つめてみる
「世界の中で自分がどの位置にいるのか、他の人とどのような違いがあるのかを知っておくことは、表現していく上で大切なことです。でも、自分のことは僕自身もまだよくわからないし、きっとこれからどんどん変わっていくはず。だから今日は、今現在の『自分かも?』をマップとして表してみましょう」と前原さん。好きなものやなんとなく惹かれてしまうもの、嬉しいことや大切にしたいこと。生徒の皆さんそれぞれが自分自身のことを改めて見つめながら、絵や写真や言葉を使ってマップ作りを進めていきました。

完成したら、みんなでお披露目。それぞれがマップを紹介しつつ前原さんと対話を重ねることで、「自分かも?」を紐解いていきます。「背景の白い紙に、白いガムテープを貼っているのが特徴的でびっくりしました。『図と地』の関係が気になっているのかもしれないね。どうして貼ってみようと思ったの?」「キャベツとアイスクリーム、餃子と空。どれも、全く異なった二つのものを組み合わせているね。そういったアンバランスな面白さを見つけるのが好きなのかもしれない。モチーフにいつも食べ物を選んでいるのには、何か理由があるの?」といった前原さんの投げかけを通して、生徒の皆さんも「言われてみたらそれこそが私かもしれない」と、本人もあまり意識していなかった自分らしさのようなものが少しずつ明確になっていく様子が印象的でした。

 

デザインは「気分」を可視化すること
「デザインは説明ではなく、『気分を可視化する』ようなことだと僕は思っています。必ずしも大きな問題やテーマを掲げて表現をしなくてもいい。好きなあの人に贈りたい、喜んでもらいたい、という手元の気持ちだけでもまずは十分。それが、そもそものものづくりの原動力だと思う。難しく考えずにゴキゲンな気持ちで、つくることを楽しんでもらえたらいいなと思います」と、授業の終わりには前原さんから、これから創作を進めていく生徒の皆さんへのエールの言葉が贈られました。

 

次回までの課題は、現在の自分を「ポートレイトカード」として表現する
前原さんと一対一での対話を重ねていきながら、生徒の皆さんそれぞれが本人もまだ気づいていなかったような「自分かも?」を発見するような機会となった今回。それらを踏まえ、個々が現在の自分自身の核となっているようなものをテーマにおき「ポートレイトカード」として表現することが次回までの課題となりました。今回作成したマップや前原さんの言葉を参考にしながら、テーマの深掘りや表現手法や画材選びまで生徒の皆さんそれぞれが自分なりの方法を模索しながら、一枚の紙の上で自分自身を表現することに挑戦していきます。

 

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