REPORT

「東京芸術中学(第2期)」 第14回 卯城竜太さん


まずはつくってみることから分かること
編集者・菅付雅信さんと13人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。7月16日(土)はアーティストの卯城竜太さんによる2回目の授業です。

「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」をはじめ、これまでにご自身が企画した数多くの展示とその背景に注目しながら、社会における現代美術の在り方に目を向けた1回目の授業。「既存のルールから脱却しながら考え続けていくことが人として大切なんじゃないかな」と言う卯城さんから生徒の皆さんには「簡単にアートをつくること」が課題として発表されました。今回は生徒の皆さんがその成果を発表しつつ、卯城さんとの対話を通じて、それぞれの作品の背景にあるコンセプトを浮かび上がらせていきました。





「簡単に」つくったアートを「丁寧に」言葉に換えていく
何かを持っている人のような形に曲げられたハンガー。近所の渓谷の空気を詰めたペットボトル。ポッキーとプリッツとトッポを一つのカップの中で混ぜていくパフォーマンス。GAKUで鳴っている音に合わせて線を描くドローイングなど。生徒の皆さんは「簡単にアートをつくる」ため、必ず「1時間以内で完成」させました。それぞれの作品をお披露目しながら、制作方法も併せて発表していきます。

「『ヤクザと家族』という映画が気に入って、ヤクザをモチーフにしたオブジェクトをつくりました。素材のハンガーに付いていた筒を木刀に見立てています」と発表した生徒に対して卯城さんからは「強そうに見えないから面白い!」と一言。強さについての認識や定義が揺さぶられていきます。「ヤクザと家族、二つはどんな風に映画で描かれていて、あなた自身はどんなところが気になったの?」「ヤクザの人の多くには刺青があるから温泉に入れないことも多いよね?そのことについてはどう思う?」「今回ハンガーを使ったのはどんな理由があるの?」。卯城さんからは数々の質問も投げかけられていきます。生徒の方も答えていくうちに自身の作品に新たな発見があったよう。「ヤクザは仲間を家族のように大切にする。そんな家族が暮らす上で当たり前だけど欠かせないアイテムであるハンガーは、ヤクザのメンバーそれぞれを示しているのかもしれません」と、卯城さんとの対話から得た気づきをコンセプトとして語っていきました。


生み出したものと向き合い続ける勇気
「できたものが一体何なのか。それはあとから考えればいい。その可能性を考えれば考えるほど、できたもののポテンシャルは上がってくる。出来上がったものを否定せず、それを育てていくことがアートの根幹なんだと思うんです」と卯城さん。また「瞬間的に生まれてきたものと向き合い続けることの勇気。これからたくさん制作をしていく皆さんにとっても大切なことだと思います」と、様々な形で作品づくりを続ける卯城さん自身からの言葉は生徒の皆さんにも力強いエールとして届いていきました。



アーティストとして、人として
卯城さんによる講義と課題を通して、アーティストとしてクリエーションと向き合う姿勢を捉えていった今回の授業。ご自身が大切にしている「既存のルールから脱却しながら考え続けていく」ために、丁寧に作品やその作者と向き合うその一連の姿は、社会の中で生きる一人の人としても大切な姿勢であることを同時に気付かされたように感じます。

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