REPORT

「東京芸術中学(第2期)」 第11回 上西祐理さん


形にするための工夫、社会と向き合うための覚悟
編集者・菅付雅信さんと13人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。6月25日(土)はアートディレクターの上西祐理さんによる1回目の授業です。

「世界卓球2015」のポスターや「リーバイス」や「ラフォーレ」の年間キャンペーン、「Perfume」のジャケットやツアーグッズなど、アートディレクターとして幅広いジャンルを手がけられる上西さん。今回はそんなご自身の仕事を実例に、それぞれがどのようにしてつくりあげられていったのか、思考のプロセスを紐解きます。さらに、上西さんの社会への向き合い方にも迫っていきながら、アートディレクターの仕事像を掴んでいきました。





広告が未来に与える影響、その可能性と責任
「クリエーションのつくり手と受け手を、広告やデザインという手段を通して繋ぎ合わせる存在」がアートディレクターであると言う上西さん。これまで手がけられてきた仕事の数々について、クライアントからはどんな依頼があったのか。その商品やサービスにどんな魅力を感じたのか。それをどんな手法で表現していったのか。今回の授業のために制作されたチャートを用いて仕事のプロセスを解説。グラフィックデザインをつくるだけでなく、空間ディレクションや衣装、キャスティング、商品開発自体まで携わることもあると言う上西さんの仕事の数々に触れ、アートディレクターの仕事像を捉えていきます。さらに、生徒の皆さんには上西さんが手がけたグッズや雑誌などの一部が手渡され、その実物の細部まで見ていくことができ、生徒からは感嘆の声も上がっていました。

上西さんが手がける仕事の中でも、企業広告は駅構内や新聞など、多くの人が見かける場所に掲載されることが多いそう。だからこそ、「今、この社会にとって必要なメッセージはなんだろう」といつも考えていると言います。例えば、まだ日本では馴染みのない低用量ピルの広告では、「#しかたなくない」というフレーズを大きくポスターにレイアウト。「生理だけどしかたないから出勤する」など、これまでは一般的とされてきた慣習に対抗するメッセージを掲げることで、様々な媒体で取り上げられ、人々が日々「しかたない」と我慢している物事を思い返すきっかけになっていったと言います。同時に「一つの広告が誰かの未来を変えうるその可能性には責任も伴う」と上西さん。心が動かされる上西さんの仕事観に迫っていきます。


形にできるからこそ、形になる前を大切にする
「私たちアートディレクターの武器は考えを形にできること。だからこそ、クライアントのビジョンも社会のビジョンも、私たちが共に考え続けることが大切だと思うんです」。目に見えない考えや思いを形にできる仕事だからこそ、その目に見えないものを大切にすること。そして、形したものが社会にどのような影響を与えるのかを深く考えること。アートディレクターという職業への印象が変わっていった瞬間でもあったように感じました。



アートディレクターとしての思考のプロセスを体験する
そんな上西さんから発表された課題は、「20年後の未来を考えること」「その時代に欲しいものやサービスのポスターをつくること」。今回の講義を通して生徒の皆さんが学んだアートディレクターとしての制作プロセスを、課題を通して体感していきます。

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