「東京芸術中学(第2期)」 第10回 卯城竜太さん
現代美術の在り方を「ルール」から考える
編集者・菅付雅信さんと13人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。6月18日(土)はアーティストの卯城竜太さんによる1回目の授業です。
アーティスト集団「Chim↑Pom from Smappa!Group」のメンバーであり、新宿のアートスペース「WHITEHOUSE」を立ち上げ、キュレーターとしても活動される卯城さん。今回は5月まで森美術館で開催されていた「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」をはじめ、これまで卯城さんが企画してきた展示の背景にある「ルール」に注目しながら、社会における現代美術の在り方に目を向けていきました。
今あるルールを疑い、これからのルールを生む
生徒のみなさんも実際に訪れた「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」。森美術館の53階を2層構造に分けて新たに「54階」をつくったこと、その階に誰のものでもない公共の場としての「道」をつくったことなど。卯城さんご本人から大切にしたかったことを聞いていきます。美術館のルールに縛られない場所としての「道」を設けたことで、そこでは誰かがものを売り始め、踊り始め、平和を祈り始め、次第にフリーマーケットやダンス大会、祈りの集会が催されるまでになったそう。「どの程度のダンスなら止められないかな?」「どんなものを販売していいことにする?」「今日はこのスペースを祈りの集会のために使おう」など、「道」にいる人たちが森美術館のルールを拡張しながら自分たちのルールをつくりだすことで、その場を自分たちの場所として運営していったことを捉えていきます。
「僕たちは、今あるルールをやたらと疑うことが好きな人たちだと思ってください」。続けて卯城さんからは会員制ギャラリー「WHITEHOUSE」での取り組みも紹介。「高級化粧品を素材にした料理を提供する」「固有種と外来種が混じった生態系を空間に再現する」という独自のルールをもとに作品をつくりあげたアーティストたちは、美味しいと感じる一般的な味覚、固有種だけで成立していることがそもそも正しいと考える一般的な生態系への感覚など、固定化された社会の規範や思想に対して疑問を投げかけていきます。卯城さんたちの多様ではありながら一貫した姿勢を感じ取ることができました。
全ての他者と共に生きていくために
「美術館で働く人も美術館で踊る人も、化粧品を料理する人もそれを食べる人も、固有種の植物も外来種のブラックバスだって。全ての他者と共に生きていく上で、『何が良くて、何がダメなのか』『なんで良いのか、なんでダメなのか』、既存のルールから脱却しながら考え続けていくことが人として大切なんじゃないかな」と卯城さん。生徒からも、「近所の広場に誰かが野菜を植えていたその光景が好きだったんですが、いつの間にかそれも禁止されていました」という実体験が投げかけられる姿も。身近な社会やこれからのあるべき社会を考えるきっかけにもなったようです。また、現代美術への興味に関わらずどのような人でも迎い入れていく卯城さんの姿勢が、敷居の高いと思われていた現代美術を自分ごととして感じ取るきっかけにもなったようです。
課題は「簡単にアートをつくること」
そんな卯城さんから発表された課題は、「簡単にアートをつくること」。マルセル・デュシャンやオノ・ヨーコ、ジョン・ケイジ、マウリツィオ・カテランなどの現代美術家を例に、その課題の意味も紐解いていきました。生徒のみなさんは、次回の卯城さんの授業までに、1時間の制限時間内でそれぞれが作品を制作。その背景にあるルールと共に発表を行います。