「東京芸術中学(第2期)」 第6回 矢後直規さん
「新しい航空会社の広告」を作ってアートディレクターの仕事を体験する
編集者・菅付雅信さんと13人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。5月21日(土)はアートディレクターの矢後直規さんによる2回目の授業です。
1回目の授業では、矢後さんの仕事とその裏側も紹介いただき、アートディレクターという仕事像を掴んでいった生徒の皆さん。今回は矢後さんが実際に手がける航空会社の広告を参考にしながら「新しい航空会社の広告を作ってみる」という課題に挑戦し、その成果を発表しました。
自分だけの感性をつかまえて、それをみんなに届けるための工夫
「違う国の友達ができた時の嬉しい気持ちを思い出して2頭のゾウの絵を書きました。飛行機の中でもこんな風に友達ができたらいいな」「この航空会社にはお客さん同士が旅行先のオススメを紹介しあえるシステムがあります」「格安航空だけどファッション雑誌に出てくるようなかっこいいイメージにしたい」「雨ばかりでも空の上では晴れていることに注目した」。今ある航空会社によるサービスの広告を新しく制作するものや、新しい航空会社のあり方から考えてその広告を制作するものなど様々なアプローチが見られます。
「あなただけの着眼点はどこにあると思う?」「そのサービスで自分が本当にいいと思えたところは?」「それを表現するために工夫したことは?」と、矢後さんは問いかけながら、生徒のみなさんのそれぞれの感性を受け止めつつ、それを社会へ届けるための試行錯誤を深堀りしていきます。その様子は、「アートディレクターは自分の感性を社会に提供していく仕事。でも感性って言葉だけでは表せない自分だけのもの。それを社会に届けるためには、様々な手段で翻訳することが必要になります」と矢後さんが前回の授業でおっしゃっていたことをそのまま体現しているようでした。
アートディレクターとしての思考の流れを体感する
「実は僕もやってみたんです」と、矢後さんも生徒と同じ課題に取り組んだ成果を発表してくれます。「海に行きたいからハワイに行くみたいに、ゾウに会いたいからタイにいくみたいに、誰でも小さい目的のために飛行機に乗ることができる。そういう世界をZIP AIRなら実現できる。だから日常的なモチーフを使ってデザインしました。なによりこのポスター可愛いでしょ?」。サービスを理解することで、自分だけの感性でそれを表現できる、そして社会につなげることができる。アートディレクターとしての思考の流れを課題の成果を通じて体感していきました。
アウトプットを続けることで得られるもの
「今日の授業を通してみんなの感性の片鱗が見えた気がします。何かをつくったり発表したり、アウトプットを続けることで自分の感性を認識できるようになってくる。だからぜひこれからも続けていって欲しいです」と、創作を続けていくことで自分の感性そのものもつかんでいきやすくなるという道筋も示してくれます。目の前の作業を積み重ねた先に何が待っているのか。それを感じられると意欲も持続しそうです。
見上げる存在でありつつも身近に感じさせてくれる
矢後さんによる講義と課題を通じて、アートディレクターという仕事像を掴んでいった今回の授業。ひとりの人としての喜びや葛藤も含めてオープンにしてくださることで、ともすれば遠い存在にとどまってしまうクリエーションに関わる仕事が身近でありつつも挑戦しがいのあるものとして映っているようでした。