REPORT

「東京芸術中学(第2期)」第5回 言葉の編集


文化を支える「言葉」に目を向ける
編集者・菅付雅信さんと13人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。5月14日(土)は、芸中ディレクターの菅付さんによる「言葉の編集」を開講しました。

「コミュニティや社会、文化そのものの基盤を築いてきたもの」としての「言葉」に着目した今回。私たちにとって言葉とはどんな存在なのか、講義を通して言葉の起源や役割を振り返り、「詩」の制作にも挑戦していきました。





言葉の歴史を探り、言葉の力を体験する
「言葉ってなんだと思いますか?」という菅付さんの投げかけから授業はスタート。数々の言語学者や作家の研究や作品を引用しながら、言葉と人間の関係性を探っていきます。

メソポタミア文明における文字の発祥。私たちが使っている漢字の成り立ち。言葉の歴史を確認していくとともに、「事実の伝達、知識の蓄積、記憶の外部化」など、言葉が私たちの暮らしで様々な働きをしていることを改めて捉えていきます。ある言語学者が提案する三つの言葉の分類に倣って、自分なりに例を考える場面も。具体的な事物を示す「インデックス(指標)」、それらの総称を示す「アイコン(類像)」、目には見えない抽象的な概念を示す「シンボル(象徴)」。これらに当てはめて自分なりに言葉を紡いでみると、「鉛筆、文房具、表現?」と思考練習にもなるようです。

「抽象的な言葉をどれだけ多くの人に伝えられるかがクリエイターにとって大切」とする菅付さんのコメントのあと、生徒のみなさんは詩をつくるワークショップにも挑戦しました。「期待/不安」「美しいこと/醜いこと」「他の人と違うこと/同じこと」などをテーマにそれぞれが詩を書き上げていきます。「東京を『アリ』に置き換えて、小さいけどワクワクするこの街への気持ちを書いています」「ウクライナと日本、それぞれの街の爆発の音と無関心な静けさを対比しました」「流行って『波』みたい。波を乗りこなしたいなと思いながらつくりました」。生徒のみなさんの詩の数々にこちらもはっとさせられました。


自分自身を培うために
「僕たち人間は具体も抽象も沢山の言葉を編み集めることで自分自身を培っています。今日分類した言葉の中でどれが1番優れているということではない。だからこそ日常的にたくさんの言葉に触れること。そのことを忘れずにいてください。」菅付さんからのコメントはこれから先、様々なゲスト講師からの課題に向けた大切なアドバイスのようにも聞こえました。


何気ないけど欠かせないもの
いつも無意識に使っている「言葉」に向き合った今回。普段の生活の上でもクリエーションをする上でも、何気ないけど欠かせない、そんな言葉のあり方に触れた生徒の皆さんからは授業中にもたくさんの質問が飛び交い、さらには授業後もお互いに質問したり、それぞれの言葉への意識も少しずつ変化が生まれていったようでした。

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