REPORT

「東京芸術中学(第2期)」 第3回 矢後直規さん


アートディレクターという仕事像を掴む
編集者・菅付雅信さんと13人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。4月16日(土)はアートディレクターとして活躍される矢後直規さんがゲスト講師を務めます。

一人のクリエイターとして社会やクライアントワークとどう向き合っているのか。今回の授業では、矢後さんのこれまでの仕事の裏側もご紹介いただきながら、アートディレクターという仕事像を掴んでいきました。




誰にも求められていない、からこそ生まれるオリジナリティ
ラフォーレ原宿の広告、RADWIMPSや菅田将暉のCDジャケットやMV、瀧本幹也、篠山紀信、奥山由之らの写真家のブックデザイン、日本航空系LCCのブランドデザイン全体まで。まずは矢後さんがこれまでに手がけられた仕事の数々を紹介してくださいます。グラフィックデザインから映像、ドローイング、ユニフォームやシューズのデザインまで、様々な手法で表現している矢後さんは「アウトプットし続けることが大切」と言います。

例えば、ドローイングという表現手法が仕事になったのは最近のこととのこと。コロナ禍の外出自粛期間中、自主的に継続的に描いていたものを周りの友人にみせたところ、仕事に繋がっていったそう。「誰にも求められていないけど、自分が好きなこと」が自分だけのオリジナリティとなり、新たな仕事へ結びついていく。そんなエピソードは10代を勇気づけるようでもありました。そのほかにも、ラフォーレ原宿の広告制作に際して描き上げたラフ案やリサーチメモの数々や、大御所フォトグラファーの事務所に出演を直談判しに行ったエピソードなど、アートディレクターとしての仕事の裏側を次々に見せてくださる矢後さん。矢後さんにとって、それらの試行錯誤が自身のクリエーションを社会に繋げていくために必要なことだったと言います。



自分だけの感性に社会に届けるために
「アートディレクターは自分の感性を社会に提供していく仕事。でも感性って言葉だけでは表せない自分だけのもの。それを社会に届けるためには、様々な手段で翻訳することが必要になります。だから何枚もラフ案を作るし、たくさんリサーチをするし、自らプレゼンテーションもする。そうすることで、自分の感性をより多くの人に届けることができるんです」と矢後さん。自分自身の感性を大切にしながら社会と向き合っていくための秘訣が宿っているような言葉がとても印象的でした。


共に学び共につくる、これからのクリエーションの理想形
発表された課題は「新しい航空会社の広告を作ってみる」というもの。ご自身も日本航空系LCC・ZIPAIRのロゴタイプ、シンボルマーク、制服のディレクションなどを手がける矢後さん。「自分の感性を大切にしてほしい。正解は『自分だったらこの航空会社を使いたい』というものだと思います。ヒントはなんでも自分の好きなものと組み合わせてみること。そして、その感性を価値づけるためにはこれまでのデザインを分析したりして、説得力を持たせることも大切。みんなで一緒にやってみてもいいかもしれませんね」というアドバイスも添えられました。生徒のみなさんは、5月21日(土)の発表までに、リサーチと広告案の制作を手掛けています。今年度初めての課題にどのように取り組んでくれるでしょうか。

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