「東京芸術中学(第2期)」 第2回 高速クリエーション史①
3万年の歴史を遡る「高速クリエーション史」
編集者・菅付雅信さんと13人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。4月9日(土)は、芸中ディレクターの菅付さんによる「高速クリエーション史」の前半を開講。3万年前にもおよぶ洞窟内の壁画やミイラ、ピラミッドなど人類史を「クリエーション」という視点で紐解いていきました。
人類の営みとしてのクリエーション
「壁画の動物は、動いている様子が描かれています。目の前にあるものをただ模写するだけではなく、そこには描く人のイマジネーションが必要となります。それを家族や仲間に伝えていったんです」「ピラミッドを通して権威者は死んでもなお自身の存在を示してきました」と、数万年前から人々が綿々と何かを創り出しコミュニケーションを生み出してきたことをまずは見ていきます。
また、それらの営みを大きく変える原因となるのが、テクノロジーの変遷であることにも着目。その例として挙げられたのが、ドイツの金細工師ヨハネス・グーテンベルクによる「活版印刷術」です。これまで貴重だった書籍が簡単に複製できるようになり、多くの人が同じものを同時に体験するという状況が訪れます。それは地域や国家といった大きな集団意識とともに、独立した個人としての意識も同時に育むことになります。その結果生まれたものの一つが日本でも有名な「印象派」という絵画。もともとは「自分の印象ばかりで絵を描いている」という蔑称だったそうですが、それは「主観的な見方と描き方が尊重される時代」の始まりでもありました。ひょっとしたら私達の美意識も印象派が切り拓いたその延長線上にあるものなのかもしれません。人類の歴史を通して「クリエーション」という営みに迫っていくと、数万年前の人々との共通項、逆に違いにも意識が向いていきます。
美しさとは何かと考え続ける場所
「今日の授業は、これまで何気なく見ていた歴史上のものを『クリエーション』として見ていきました。そこに美しさがあるのか、そもそも美しさとはなんなのか。このことを考え続けていく場所が東京芸術中学です」と菅付さん。美しさを求める気持ちはあるものの、普段の学校の授業ではあまり考えないことなのかもしれません。そして「いつか自分だけの美しさに出会うため、これまでに美しいとされてきたものに触れること、そして自分なりの美しさの答えを出してみることに芸中を通して挑戦していきましょう」とメッセージが贈られました。
講師と生徒の垣根を超えて生まれる対話
講義を終えた後は生徒の皆さん同士で自己紹介の時間も。菅付さんも好きな映画をおすすめし合ったりしながら、お互いの人となりにも少しずつふれていきます。なかには「学びたいけど、学ぶと自分の世界観が崩れてしまうものでしょうか?」といった議論に発展しそうな会話も。菅付さんに直接いろいろと相談しながら長期間に渡って時間を一緒に過ごしていくことができるのも、芸中ならではの魅力。次回は、今年度初めてのゲスト講師、アートディレクターの矢後直規さんをお迎えします。