「Directed Games」 上映会
藝術と教育を重ねる機会
永井佳子さんによる、「つくることのリアリティを共有する」ことをコンセプトに作られた小冊子「Materia Prima」。その第2号では、ブラジル人アーティストのジョナタス・デ・アンドラーデ氏の映像作品「Directed Games(原題: Jogos Dirigidos)」が取り上げられています。
「ブラジル人教育学者パウロ・フレイレの教育のメソッドを発展させ、聴覚障害者のジェスチャーの理解を促すような言葉を伴った映像」とされる本作品の上映会と、永井さんによるレクチャートークを開催しました。当日は、ジョナタスさんも早朝のブラジルからオンラインで参加してくださいました。
パウロ・フレイレへの関心から、ブラジル北東部の町レシフェ市も探訪されていた永井さん。「Directed Games」をより深く味わうためにも、永井さんのレクチャーを通して周辺の地域の風土や歴史にも触れていきます。約60分の作品上映の後、ジョナタスさんと会話する機会も叶いました。
映像の舞台はブラジルの小さな村、ヴァルゼア・ケイマーダ。聴覚障害のある人々が多く住んでいるというこの地域には、公式の手話を学ぶ学校がなく、だからこそ「長年にわたる自発的なコミュニケーションの結果として独自の言葉が作られていった」と言います。そしてこの村では、聴覚障害のあるなしに関わらず、人々が共に生活しています。
「登場人物のパッションに圧倒されて、映像に出てくる手話がどのような意味を持つのかを知りたくなる気持ちが強く沸き起こった」「作品のエンドロールで村の人達が一人一人丁寧に紹介をされていて、そこに尊厳を感じた」「全身全霊で伝えようとしているコミュニケーションに胸を打たれて、普段いかに言葉のみに依存したコミュニケーションになっているということを感じた」といった感想から、「シリアスな状況に対する眼差しはどのようなものか」「被写体となった村の人達が映像作品を鑑賞した際にはどのような様子だったのか」といった質問も、直接ジョナタスさんと交わしていきます。すべてをオープンにまっすぐ応えてくれるジョナタスさんの姿勢が後押しするように、次々の質問や感想があがっていくことも印象的でした。
当日は、10代から70代の方まで、教育やクリエーションに関心を持つ幅広い方々にお越しいただく機会となりました。これからも、藝術と教育が重なるところを深めていきたいと考えていますので、このような取り組みを続けていきたいと思います。本企画の開催にあたっては、そのような想い等を長いステートメントとして記載していますので、ぜひあわせてご覧ください。