REPORT

「Beyond the Music(第3期)」第5回 音楽を届けるということ


音楽プロデューサーという仕事に触れ、制作への心構えをする
「Beyond the Music」は江﨑文武さんによる音楽のクラス。多角的な視点で音楽表現のあり方や可能性を見つめていきながら、全12回の授業を通して生徒一人ひとりが音楽作品を作り上げていきます。

西洋音楽の成り立ちに目を向けたり、様々な民族楽器に触れながら身体を通してそのリズムや音を感じたり、音楽と音の違いに注目することで音楽をそもそものところから捉え直していったり。様々な角度から音楽のあり方を見つめたこれまでの「レクチャー編」。その最終回となる10月22日(日)のテーマは「音楽を届けるということ」。ゲスト講師は、音楽家・音楽プロデューサーの冨田恵一さん。冨田さんの音楽観に触れていきながら、次回以降制作を進めていく上でのヒントを掴んでいきます。

 


音楽を構造的に聴くことで見えてくる「音楽的・音響的工夫」
「今日は、音楽プロデューサーとして僕が自分なりに見つけた『自分が表現したいもののコアを最大限誤解なく、正しく、多くの人に届けていくための音楽的・音響的工夫』をお話ししたいと思います。もしかしたら今すぐにはピンとこないかもしれない。でも、これから創作を進めていく中で、少しでも思い出して手がかりにしてもらえたら嬉しいです」と、冨田さん。

そんな言葉とともに、今回の授業のために冨田さんが作ってきてくださったspotifyのプレイリストが登場。手がけられた楽曲から、ご自身の創作の原点となっていたり強く影響を受けた楽曲など、およそ80曲が入ったプレイリスト。それを教材としつつ、「自分が表現したいもののコアを最大限誤解なく、正しく、多くの人に届けていくための音楽的・音響的工夫」を学んでいきます。

そこで主に実践されたのは、「音楽を構造的に聴く」ということ。例えば、「メロディ」「和声」「音色」など、音楽が構成される要素を分解するように、それぞれに注目をしながら聴いてみたり。曲の中での盛り上がりや展開を意識しながら楽曲の全体像を捉えてみたり。「その楽曲がどのように作られているのか?」をじっくりと耳を傾けることで紐解いていきながら、作り手の意図や想い、またそれらがどのような方法で楽曲に反映されているか、という部分にまで想像が及んでいきます。キーボードを使ったデモンストレーションを交えつつ、時にはご自身の楽曲のパラデータ(各楽器または各パートごとのオーディオファイル)を扱いながら細かく解説をしてくださる冨田さん。そこから伺える知識と実践の膨大なアーカイブとともに、それを惜しみなく話してくださる姿そのものからも、学ぶことが多かったように感じます。

 


自分の「コア」を曲げないこと
「自分が曲作りにおいて本当に大事にしたいものは何か。とにかく自分のコアとなるものを見つけて大切にしてほしい。それを続けていれば、いつか必ず誰かに届くはず。逆に自分のコアを曲げてまで、多くの人に届けることを考えなくていいと僕は思っています。一方で、コアを見つけることはなかなか簡単ではない。まずは思うままに、どんどん作ってみましょう」と、冨田さん。

20年以上、音楽プロデューサーとして楽曲を作り続けられているからこそのそんな言葉は、これから制作を進めていく生徒の皆さんに重みのあるものとして響いていったようでした。

 


次回は楽曲のコンセプトを磨く
「今回を含めたこれまで5回の授業を通して、それぞれ異なった音楽のあり方を感じられたと思います。そこでの気づきや学びを糧にしながら、自分のクリエーションと向き合っていってほしい。実際に手を動かしていく中で分かることや学びが深まっていくこともきっとあるはず。改めて振り返りつつ、創作に臨んでもらえたら嬉しいです」と、江﨑さん。

次回からはいよいよ、本格的な楽曲制作がスタートしていきます。次回の授業は、楽曲の「コンセプト立案」。自分はどんな曲を作りたいのか。曲の中で何を表現していきたいのか。メイン講師の江﨑さんや生徒同士でフィードバックをしあいながら、それぞれの楽曲のコンセプトを磨いていきます。

 

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