「Beyond the Music(第3期)」第4回 音と音楽の境界線
音楽と音の「境界線」を探る
「Beyond the Music」は江﨑文武さんによる音楽のクラス。多角的な視点で音楽表現のあり方や可能性を見つめていきながら、全12回の授業を通して生徒一人ひとりが音楽作品を作り上げていきます。
10月8日(日)に開講された第4回のテーマは「音と音楽の境界線」。ゲスト講師には作曲家・演出家の額田大志さんをお招きし、「一見音楽になり得ないもの」から音楽をつくっていきました。
「一見、音楽になり得ないもの」から音楽をつくる
「作曲家として活動をしているうちに、そもそも音楽とは何か?ということを考え始めました。例えば、自分のバンドの曲と、広告や舞台の音楽とでは、同じ『音楽』と言われているけどつくり方やそこで表現したいものが全く違う。どこからが音楽なのか?何をもって音楽とするのか?今日はそれを、身体を動かしながら一緒に考えてみたいと思います」と、額田さん。今回の授業では、「一見音楽になり得ないもの」から音楽を作り出していく試みを通して、額田さんの課題意識を体感していきます。
まずは、「一見、楽器になり得ないもの」を楽器に見立ててみるというもの。生徒の皆さんには1個ずつビー玉が配られます。GAKUの教室にある色々なものを叩いてみて、その音に耳を傾けていきます。叩き方や叩く場所を変えれば、音色も変わっていきます。それらの音をいくつかの分類に整理していく額田さん。額田さんのナビゲーションにそってみんなで音を奏でると、「一見、音楽になり得ないもの」が音楽として感じられるようになっていきます。一連の活動を通して、音から音楽が立ち上がっていくプロセスをしっかり味わうことができました。
さらに、生徒の皆さんそれぞれの気づきを持ち寄りつつ、グループで一つの曲を作り上げていくことにも挑戦。そこでは、「一定のリズムが刻まれている中に別の音色やリズムが入れて展開をつくる」「曲の始まりと終わりの合図を設ける」など、グループごとに音楽として構成するためのルールが考案され、演奏を通して実践されていきます。楽器として使うものが一緒でも、設けられるルールによってそれぞれ全く異なった雰囲気の曲が生み出されていく。それはまさに作曲と同じ感覚でした。
「音楽とは何か?」を問い直すことで見えてくるもの
「身の回りの音に耳を傾けることの大切さ。DTMで曲を作るときは、楽器でもそうでなくても、どんな音も同じ波形になる。それは『どんな音でも音楽の要素になりうる』ということを表しているようにも思います。そういう意識で日常の音を聴いてみると、きっといろんな発見があるはず。ぜひ試してみてください」と、江﨑さん。
「どのように音楽として成り立たせるかを考えることは、『人にどう聴いてもらうか』を考えることに自然とつながっていくと思います。聴く人と演奏する人の関係性に目を向けることは、曲を作る上でもヒントになるはず」と、額田さん。
授業の終わりには講師のお二人から今後の創作の手がかりになるようなコメントが贈られ、授業が締めくくられました。
次回は音楽プロデューサーという仕事に触れる
音と音楽の境界線を探ることで、音楽を構成する要素や聴き手の存在といった、作り手として意識すべきポイントにも自然と目を向ける機会となった今回。いよいよ次回は、音楽制作を進めていく前準備としての「レクチャー編」の最終回。ゲスト講師は音楽家・音楽プロデューサーの冨田恵一さんです。「音楽を届けるということ」をテーマに冨田さんのこれまでの創作やその背景に触れながら、音楽プロデューサーという仕事を紐解いていきます。
(写真・執筆:佐藤海)