「Beyond the Music(第3期)」第3回 リズムと音楽
多様な民族楽器に触れて音楽観を育む
「Beyond the Music」は江﨑文武さんによる音楽のクラス。多角的な視点で音楽表現のあり方や可能性を見つめていきながら、全12回の授業を通して生徒一人ひとりが音楽作品を作り上げていきます。
9月24日(日)に開講された第3回のテーマは「リズムと音楽」。ゲスト講師は、音楽家・打楽器奏者・デザイナーの高良真剣さん。前回の「西洋音楽の歩み」で学んだこととは対照的に、アジアやアフリカなどの西洋圏以外の地域の音楽や楽器に触れることで、音楽観の幅を広げていきました。
初めての楽器に触れ、心地よい音を探る
今回は、Sony Musicのラウンジスペース「コラボカフェ」を訪れての出張授業。会場には、多種多様な民族楽器がずらりと並びます。これらは全て高良さんの私物。中には既存の楽器を改造したり身の回りの材料を使って自作されているものもあるそうです。
「民族楽器の面白さは、同じ名前でもモノによって楽器の大きさや出る音が少しずつ違うところ。それは、元々演奏する人の身体に合わせて作られているものだから。なので自分も、既存の楽器に欲しい音がなかったり身体に合わなかったりする時は手作りで楽器をつくることもあります。日本では珍しいですが、アフリカなどでは演奏家と楽器職人が兼業されていることも多いんです」と、高良さん。今回は実際に音を鳴らしてみることで、それらの楽器の個性を体感しつつ、その文化背景を見つめていく機会にもなっていきます。
「自由に触って音を鳴らしてみてください」という声がけで、会場の中心に置かれた楽器に恐る恐る近づいていく生徒の皆さん。たくさんの楽器に交代で触れつつ、音を奏でていきます。「演奏する人によっても鳴る音が全然違う」「この楽器はずっと演奏していたくなる」と、それぞれが感触を掴みながら、様々な音に耳を澄ませていきます。自分と馴染む楽器をみつけたところで、全員でセッション。高良さんがリズムをとったり奏者を指定したりとインストラクションをしていくと、今まで練習として奏でられていた音が、セッションとして輪郭を帯びていきます。自分の心地いいリズムを手を動かしながら探る。他の人の奏でるリズムに身体を預ける。それぞれのリズムが重なり合い一つの演奏が紡がれていく。そういった営みの中で、音楽の根源的な喜びにも触れていくようでした。
道具を使いこなすことは、創作の可能性を広げる
授業の終わりには、今後の音楽制作の素材として、生徒の皆さんそれぞれが心地よく感じたリズムを録音する時間も設けられました。
「楽器にはそれぞれ個性がある。実際に触れて、他の楽器と一緒に鳴らしてみるとその違いがよくわかります。そして、道具を変えることで頭の使い方や意識も変わる。色々な道具を知っていることは、創作の可能性を広げることだと思います。それは音楽だけではなく色々な創作に通じていくはず」と、江﨑さん。これからの制作に繋がっていくようなコメントも贈られ、授業が締めくくられました。
次回は音楽と、音や言葉との「境界線」を探る
次回のテーマは「音と音楽の境界線」。ゲスト講師は、作曲家・演出家の額田大志さん。実際に身体や声を使って表現することを通して、音や言葉が「音楽」とされていく境目や瞬間を見つめていきます。
(写真・執筆:佐藤海)