REPORT

「我美と作美(第3期)」第1回 美しさの個人史


メイクアップを通して、新たな「美しさ」を表現する
「我美と作美」は、メイクアップを通して新たな「美しさ」を表現するクラス。3期目となる今年度も、様々なジャンルのクリエイターが生み出す「美しさ」に触れながら学びつつ、10代の生徒の皆さんが、メイクアップを通して、これからの時代の美意識を生み出していきます。

9月25日の初回授業では、メイン講師であるヘアメイクアップアーティストの計良宏文さんに加え、GAKUディレクターでファッションデザイナーの山縣良和さんをゲスト講師にお迎え。講師のお二人、生徒の皆さんそれぞれの美意識の原点をみつめながら、ヘアメイクアップの世界の奥深さを学んでいきました。




美意識の原点を持ち寄る
小学生の頃からメイクを楽しむ中学生、ヘアメイクアップアーティストを目指して専門学校にも通う高校生、普段はグラフィックデザインを勉強する大学生など、今年度も様々な生徒の皆さんが集うこのクラス。初回授業では、メイン講師の計良さんも含め、自己紹介と併せてそれぞれが「美しい」と感じるものを持ち寄り発表します。

トップバッターは計良さん。羽化するセミの透けた外殻、均等に並んだ花の花弁、広大で鮮やかなオーロラなど、自然の中に表れる「美しさ」。装飾豊かなアールヌーボーの香水瓶、石庭に施される枯山水など、人の手で作られた「美しさ」。それらは、併せて紹介された計良さんの作品との重なりも感じられ、美意識がクリエーションの土台となることにまず気付かされます。そして生徒の皆さんからは、視覚的なものに限らない多様な「美」の捉え方が挙げられていきます。水、空、波、太陽、魚、クラゲ、ナスカの地上絵、日本画、ファッション雑誌、アイドル、宝塚の男役、二重、バッハの音楽、自分の空想の世界、友人との何気ない時間、ジェンダーの平等実現を進める活動まで、生徒のみなさんそれぞれの感性の違いが新鮮に響いているのが印象的です。

中には「本来美しいものは目に見えないはずで、今美しいとされて目に見えているものは偽物。それっては逆に醜いのでは?」「生きていく上で美しいと感じることは絶対に必要なわけではない。でもなぜ人は美しさを求めるんだろう?」と、「美しさ」のそもそもを問いかける視点も。それらの問いを大切にしながら、これからのクラスを通じてその答えを探っていくこと。それは、新たな「美しさ」を表現する際にも求められていくものになりそうです。



美意識の変遷と古層を捉える
「皆さんにとってこの人たちは美人ですか?」。生徒の皆さんの多種多様な美意識を捉えたのち、計良さんからはクレオパトラを描いた壁画から歌川広重や菱川師宣による浮世絵、竹久夢二のイラスト、そして現代の絵画まで、様々な時代の「美人画」が紹介されます。顔立ち、出で立ち、化粧、服装、それぞれが全く異なる美人画を並べてみると、社会全体の美意識が時代と共に変化を続けていることがわかります。

続いてファッションデザイナーの山縣さんは、ファッションとそれに紐づくメイクアップの世界史を解説。毛皮から始まる人間の装いの歴史をさらうと、7万5千年前から人々は顔に色を塗り、メイクをしていたことがわかるそう。「なぜ人はこれほどに装うのか。それは『私』という存在に私たちは永遠にたどり着けないから。なぜなら自分の姿、特に顔は自分では見れない。だからこそ『私ってなんだろう?』という問いを起点に様々な装いが生まれ続け、メイクアップも美意識も同時に変化し続けているんです」と山縣さん。現在を生きる自分自身の美意識が、人類や社会の歴史と紐づいていることを認識することは、これからの表現に対する向き合い方を深めてくれることになりそうです。


新たな「美しさ」をつくるために
「みんなが共感できる美しさ。その一方で自分だけにしか感じられない美しさ。今回の講義を通して、どちらも感じれたと思います。どちらも大切だけど、二つ目の美しさはこれからのクリエーションのヒントに特になる。その違いを怖がらないで、一歩踏み出して表現していってほしいです」と計良さん、「自分の美意識のルーツを探ること。そこに自分だけのオリジナリティがある」と山縣さん。全11回の指標となるようなコメントが生徒の皆さんに贈られました。

美意識と社会の関係性を見つめる
次回はゲスト講師にメディア環境学者の久保友香さんをお迎え。「美しさと社会」というテーマを掲げ、社会や歴史によって変わる美の基準を体験しながら学び、美意識の移り変わりについてさらに深堀りしていきます。

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