REPORT

「我美と作美(第3期)」第2回 美しさと社会


歴史から紐解いて体感する美の多様性
「我美と作美」は、メイクアップを通して新たな「美しさ」を表現するクラス。3期目となる今年度も、様々なジャンルのクリエイターが生み出す「美しさ」に触れながら学びつつ、10代の生徒の皆さんが、メイクアップを通して、これからの時代の美意識を生み出していきます。

9月27日の第2回授業では、メディア環境学者の久保友香さんをお迎えし、時代や社会によって影響を受ける「美しさ」の変遷に着目。様々な「美人画」が登場した初回授業を振り返りながら、なぜその変遷が生まれていったのか、その背景をより深く探っていきます。





いつの時代も変わらない「作美」という営みと変わる「美しさ」
美人画の変遷に関する久保さんの研究成果をみていくことで、時代によって変化していく美意識を学び、体感していきます。目を細く厚みがあるように見せる時代、吊り目に引き上げて見せる時代、タレ目に見せる時代、顔の1/3以上が目で覆ってしまう時代の美人画まで。時代を超えた「作美」の営みが感じられます。

時代ごとの美しさの変遷をさらに深く味わうために、久保さんが開発した「Orikao Method(折顔メソッド)」を実践。自分の顔を出力した紙を折り紙のような要領でいろんな折り方を試していくと、時代ごとの美人画の顔のように変わっていきます。頭ではわかっていても、実際に自分の顔を素材にその変化を目にすると「作美」の手応えも感じやすくなっていくようです。「そもそも顔の造りそのものは昔の人も今の人もほとんど同じ。それでも顔が違って見えるのは、まさに『作美』の方法が異なっているんですよね」と言われるように、時代ごとの美しさの変遷を自分ごととして捉えていきます。

また、技術がその時代の美意識に強く影響するという密接な関係性も浮かび上がってきます。例えば、10代の皆さんにも身近な「プリクラ」。肌を明るく見せる技術、髪を艶やかに見せる技術、目を過剰に大きく見せる技術、目をナチュラルに見せる技術など、画像処理の技術の発展に合わせて、メイクの方法も変わっていったそう(プリクラでの白飛びを防いで目元をはっきりさせるために目の周りをサインペンで囲っていた時代があったほど)。生徒の皆さんも「少し前のプリ機は盛れすぎるからアイメイクは抑えてた」など、自身のプリクラ体験を振り返ると、その時代の技術から自身の美意識も影響を受けていた心当たりも見つかったようです。




技術の変遷を紐解く
授業の後半では、資生堂でメイクアップの製品開発に携わりリップを中心とした応用研究に取り組む冨田希子さんをゲスト講師にお迎えし、リップにまつわる技術の変遷を学んでいきます。「見た目はあまり変わらないリップですが、その一本に応用されている技術は変化し続けているんです」と言うように、「色の時代」「ツヤの時代」「機能の時代」「ボリュームの時代」と、1990年代から2010年代だけでも、リップに求められるものはこれだけ細かく分析できるそう。

例えば、「色の時代」におけるリップは、バブル全盛期の中で華やかな装いを人々が求めることで、新たな「発色の良さ」を実現する技術が開発されたと、富田さん。暗闇の中でも発色するという、その技術を応用した色材を実際に紹介してくださいました。また、「機能の時代」におけるリップは、人びとの美意識は目元に集中していたそうで、それとバランスをとるように口元には「落ちにくい」という技術が求められたそう。そして、それは久保さんから紹介されたプリクラの全盛期における美意識と重なるとのことで、講義のなかでの学びも関連していきます。

講師の方々のお話を通して、美意識がその時代の技術に影響を受けることと同時に、新たな美意識を人びとが求めることで逆に技術が変化していくということも実感されていきます。そして、このクラスのテーマである、「新たな美意識を表現する」ということが、社会により良い変化をもたらしていくということを少しずつ掴んでいく時間となりました。

授業の最後には「未来のコスメ」を考えるグループワーク。自分がどんな美しさを表現したいのか、その視点から想像を膨らませると、講師のお二人も思いもしないような提案も発表されていきました。


他人の視点を通じて、自分の美意識を拡張する
次回はゲスト講師に「ONE&ONLY」をモットーに活動するタレントエージェンシー「PUMP management」代表の加藤メイさん、そして所属タレントの皆さんをお迎え。事前課題は、「自分が『ダサい』と感じるものの画像を集めてくる」こと。これまで一人ひとりが違う美意識を持っていることを体感してきた生徒の皆さん。それぞれの美意識で「ダサい」ものを見てみると、「イケてる」部分が見つかるかもしれません。多様な視点を通じて、自分の美意識を拡張することを目指していきます。

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