「(Non)Fictional Urbanism – まちの観察と実験 –」第2回 ヒトの観察
人のふるまいから街を捉える
港区・新橋エリアを舞台にして、リアルな都市空間や建築デザインを学んでいく「(Non)Fictional Urbanism – まちの観察と実験 –」。建築家の海法圭さん、津川恵理さん、建築リサーチャーの川勝真一さんからなる「Town Play Studies」と、変わりつつあるまちの「観察」と理想の都市のあり方の「実験」を通して、これからの都市や街のあり方を考えていきます。
9月21日(木)の第2回授業では、新橋を訪れる人々のふるまいを観察するフィールドワークを通して、人と街との関係性を学びつつ、自分たちなりにこの街の特徴を浮かび上がらせていきます。
もう一つのありうる新橋
前回は新橋を構成する要素として「モノ」に着目し、「新橋的アップサイクル」や「都市の憩い」など、街の特徴を見出してきました。続く今回は「人」に着目し、「新橋ならではの人のふるまい」をテーマに新橋駅周辺をフィールドワーク。その観察を踏まえて「もう一つのありうる新橋」というテーマから短い映像作品の制作にも挑戦します。
まずは講師の津川さんより「人」に着目したご自身のプロジェクトが紹介されます。「全員同じ動きをしている都市の人々を、それぞれの踊り方で踊らせたかった」という想いから始まったというバルーンプロジェクト。風に揺られて不規則に動く風船をいくつも街中に置くことで、それを避ける人々の動きは普段とは全く異なるものとなり、それはさながら踊りのようでもありました。それぞれの身体性が街中に溢れる様子を見ると、街そのものも生き生きしているようにも感じられました。
観察と実験の実践
生徒の皆さんが「人のふるまい」を観察するためにまず向かった先は新橋駅前のSL広場。多くの人が待ち合わせをしているこの場所では、それぞれが視線をスマホに落としながら自分自身のパーソナルスペースを確保して「自分の陣地」にしているように見えたとのこと。明確に視覚化されているわけではないけれど、確かに感じられるゾーニング。広場のそういったゾーニングに人の振る舞いとして、どのように干渉していけるか。生徒の皆さんが、広場の中心に集まって、お互いに視線を合わせながら四方向に離れていくと、そこには新たな空間が生まれたように感じられます。通りかかる人もその新たなゾーニングを感じている様子で、その空間を避けていきます。まさに「人のふるまい」から都市体験がダイナミックに変化していきます。
これらの観察や実験を重ねていくと、街での自分自身のふるまいが、いかに決まりきった型のなかにはまっていたのかが実感されます。その他にも、個人の買い物客で溢れているデパートのなかを集団で歩いてみて感じる違和感。オフィスから帰宅する人々が押し寄せる交差点をスキップして進んで感じる違和感。違和感を大切にしていくことで、街の新たな側面を捉えていく挑戦にもなっていくようです。
街の反応から浮かび上がるもの
「新橋の人はみんな他人に興味がないと思ったけど、意外と視線を感じた」「一人でいる人は周りをすごく意識してた」など。録画映像を編集していくことで、街の人々の反応が自然と生徒のみなさんの話題にあがっていきます。観察だけでなく、自ら街の中でアクションを起こせば、街からそのレスポンスを受けることができる。そのフィードバックから感じる都市像があるようにも感じられます。
「今回は、人のふるまいに着目しつつ、自分たちのふるまいも起こしていくことで、街を舞台に観察や実験をするということの手応えを感じていけたと思います。そして、それを通すことで、その街の特徴を少しずつ掴んでいきやすくなると思います。これからも、観察も実験も繰り返していきましょう」。これまでの観察を通して、海法さんからはこれからの指針となるようなコメントも贈られました。
次は、新橋の「空間」を観察
次回は、街の「空間」の観察を通して、理想的な都市体験をフィクショナルに構想していきます。