REPORT

「Beyond the Music(第3期)」第2回 西洋音楽のあゆみ


西洋音楽の成り立ちに迫る
「Beyond the Music」は江﨑文武さんによる音楽のクラス。多角的な視点で音楽表現のあり方や可能性を見つめていきながら、全12回の授業を通して生徒一人ひとりが音楽作品を作り上げていきます。

今回からは、一線で活躍する音楽家やクリエイターとともに様々な角度から音楽のあり方を紐解く「レクチャー編」が始まります。その初回となる9月10日(日)のテーマは「西洋音楽のあゆみ」。ゲスト講師にピアニストの清塚信也さんをお招きし、西洋音楽の成り立ちを学んでいきます。

 


音楽家のための空間で、生演奏を交えながら学ぶ音楽史
今回は、建築家の吉村順三さんが音楽家の園田高弘さんのために設計した「伊藤邸(旧園田高弘邸)」を訪れての出張授業(この建物は、クラスを主宰する江﨑さんがご自身の作品「薄光」のMV撮影の舞台として使用した場所でもあります)。

授業の前半では、西洋音楽の成立条件としての、音階や音律や和音などを取り上げ、その成り立ちを紐解いていきます。例えば、「『ドレミファソラシド』の音階をつくったのは数学者のピタゴラス。鍛冶職人が金属を叩く音の中に美しく響く音とそうでない音を見つけ、美しく響く音が鳴る理由を論理的に突き止めた」そうです。

授業の後半では、様々な音楽家の名前を挙げ、西洋音楽の発展において果たした役割について学んでいきます。例えばベートーヴェンは、当時貴族の娯楽として捉えられていた音楽を一つの芸術として確立させ、音楽における「著作権」の概念を最初に作った人物であること。例えばリストは、音楽以外のイメージや心象風景から着想を得た一つのテーマをもって表現をする「標題音楽」というジャンルを初めて定義した人物であること。例えばシューマンは、作曲家であるとともに、ジャーナリストとして初めて音楽評論の雑誌を刊行した人物であること。

これらの清塚さんによる解説はピアノの実演を伴うので、理論や歴史を音楽体験としても受け止めて学んでいくことができる貴重な機会となりました。そして、「現在の音楽の基盤となっているものも、実は誰かの個人的な興味や日常の中での小さな気づきがきっかけになってる。自分の手で形にできなかったり解決できなかったりすることでも、生活の中でちゃんと感じて、考えることが大切。それは音楽以外にも通じることだと思います」とクリエーションに真摯に向かう清塚さんのお話に、生徒のみなさんが真剣な眼差しで食い入るように耳を傾けている様子が印象的でした。

 


バカにされるくらいの新しい音楽を
「いろんな音楽家によって新しい音楽が作られてきた。その時代にはバカにされてきた、タブーになっていたようなものが、時間が経ったあとに新しい音楽として受け入れられていたりする。ふとした疑問を大切に。固定概念は気にしなくていい。ひっくり返して欲しい。みんなの新しい音楽に自分も触れてみたい」と、最後には清塚さんから力強くもあたたかなエールの言葉が贈られ、授業が締めくくられました。

 


次回は、リズムを軸に多様な民族楽器に触れる
次回のテーマは「リズムと音楽」。音楽家・打楽器奏者・デザイナーの高良真剣さんをゲスト講師にお招きし、様々な民族楽器に触れながら、アジアやアフリカなど、西洋圏以外の特定の地域で独自に発展していった音楽の成り立ちに目を向けていきます。

(写真・執筆:佐藤海)

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