REPORT

「新しい演劇のつくり方」第5回


脚本制作と演出考案を行き来しながら作品を練り上げる
演劇集団「範宙遊泳」代表、劇作家で演出家の山本卓卓さんと13名の10代の生徒のみなさんが、山本さんの代表作『うまれてないからまだしねない』の世界観をベースとした新たな演劇の制作・上演を目指す「新しい演劇のつくり方」。1月23日は第五回授業を開講しました。

脚本、演出、演技という3つ要素から演劇制作のプロセスを捉え、実践してきたこれまでの授業。今回から生徒のみなさんは脚本チームと演出・演技チームに分かれ、お互いの考えをすり合わせながら、目前に控える本番に向けて作品を仕上げていきます。





脚本をつくりながら演じ、演出をしながら脚本をつくる
まずはじめに、前回の授業後に新たに加筆された脚本がお披露目されます。「10代って透明で形のない水みたい。だから水の中という場面を新たに追加しました」、「最初のシーンは風でどこかに飛ばされてしまいそうな僕の気持ちを表現しています」。脚本チームから、それぞれのシーンに込めた日常で感じている想いやふと湧き上がってきたイメージも紹介されました。同時に「今回のベースにもなる『うまれてないからまだしねない』は生きることと死ぬことがテーマだと思う。だけど、そもそも生きているってみんな感じていますか?それってどんな時?」と、作品の根本を問う局面も。何を表現したいのか。すべきなのか。そもそもを問い合う会話からも、ディスカッションは深くなっていきます。

授業の後半では、それらのディスカッションを経て、脚本チームは脚本のさらなる修正、そして演出・演技チームは脚本をどのように表現していくか、アイデアを出していきます。「公園での場面はとても大切だよね。公園という舞台はどうやって表そうか?」「こんな風に教室の角にぞれぞれの場面をあらかじめ作ってみたらストーリーが伝わるかも?」全員で、構想を具体的に表現する方法を吟味していきました。


本番が終わったあとも演劇と向き合っていくために
「脚本を練って、演出を考えて、稽古をして。たくさんのコミュニケーションが必要な演劇って本来とても時間がかかるもの。だから、みんなに7回しか会えない今回の一番の目標は、本番を終えてみんなが演劇のスタートラインに立つことなんです。これまでの授業を通して演劇をつくりあげるプロセスを体感してきました。それらを振り返りながら、『人間としてより良く生きるための学び』にも繋がる演劇とこれからも向き合ってほしい。そんなきっかけになればいいなと思っています。」自分自身の人間像を持ちながら、他者と協力していくこと。成果発表の機会としての上演だけでなく、集団創作のプロセスのなかで感じてほしいことへのメッセージが贈られました。


難しさを感じるからこそ、対話が深まる
脚本チームと演出・演技チームで意見を交わしながらお互いの制作を進めていった今回の授業。構想を具体的な言葉や描写にしていくことの難しさを感じながら、だからこそ全員での対話にはより熱が入っていきました。個々の意見を活発に交換していくその様子は、山本さんが初回授業で大切にしたいと語った「インタラクティブ」な関係性を体現しているよう。集団創作におけるその重要性を改めて重ねて実感することができました。そして、次回は本番前の最後の授業。本番に向けて両チームの成果を発表し稽古に取り組んでいきます。

 

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