REPORT

「遊びのアーバニズム実践学」第5回 特別講義


「遊び」を通して建築や都市計画を考える意味
街を舞台に、「遊び」を通してリアルな都市空間や建築デザインを学んでいく「遊びのアーバニズム実践学」。講師を務める建築家の海法圭さん、津川恵理さん、建築リサーチャーの川勝真一さんと、東京理科大学理工学部建築学科西田研究室の学生の皆さんとともに、身体的なコミュニケーションである「遊び」から、これからの都市のあり方を考えていきます。

「遊び」を通して様々な視点から都市を体験してきたこれまでの授業。1月25日(火)の第5回では、海法さん、津川さん、川勝さんそれぞれの作品や活動、そこに込められた想いを知ることで、それらの体験がどのように建築や都市計画につながっていくのかを改めて捉え直していきました。

 


3人の講師は、どのように「遊び」を取り入れてきたのか
場所の特性を見出して使いこなす。使い手が使い方を自由に決定していく。誰もが参加できる。これらは「遊び」にも通ずる要素でありながら、建築や都市計画にもつながっていきます。

海法さんによる新潟県上越市に設計された雪室「ユキノハコ」。「日本は国土の50%が豪雪地帯で、人口の15%がそこで暮らしています。海外の人からしたら『なぜわざわざそんな場所に?』と言われるくらい、実は不思議なこと」だそうです。だからこそ、「その土地特有の環境をポジティブに捉えて活用していく役割を建築物が担っている」と言います。

津川さんによる神戸市の広場空間に設置された「Lean on Nature」。用途を提示しないままでおくことで「人と公共空間の新たな関わり方を生み出される」と言います。そこでは「100人いれば100通りの使い道が生まれる空間をつくりたい」という想いがあり、「都市には多様な人がいるから、創り手の思い通りにならないことが多い。そのような『エラー』をいかに許容できるかということが大切」とされています。

「『建築リサーチャー』として、様々な人が建築に関わっていける可能性を広げる活動をしています」という川勝さん。そこには「より良い街づくりのためには、建築家が良い建築を作ることも大切だけど、街に主体的に関わっていける人を増やしていくこと」が必要であるという着眼があります。建築物にグラフィティーをするパフォーマンス「Graffiti Research Lab」や建物の改修をワークショップ形式で行った「HAPS BASE WORKSHOP」は誰もが建築に参加しやすいものでした。

 


飽きない工夫
「『遊び』の良い面もありつつ、でも『遊び』には飽きるという要素もあります。飽きないようにするにはどうしたらいいですか?」という生徒からの質問も。「自分と仕掛けの2つだけだと、予測できるから飽きちゃう。自分でコントロールできないような要素を入れてみるのはどうかな?」「その人ごとの『飽きないポイント』っていうのもあるよね。私は水の上に波紋が生まれているのとか、ずっと見ちゃうな」と講師の方との議論も発展していきました。

 


次回は街の「ルール」をデザインする
次回のテーマは「YES sign」。個々の都市体験を元に、禁止ではなく「許容する」ルールを生徒それぞれが考案し、AR技術を使って都市の中に実装することを試みます。「ポジティブな決まりごと」によって人々の暮らしや都市のあり方はどのように変化していくのか。そもそも、現在のルールは人にとって本当に過ごしやすいものになっているのだろうか。物や形ではないルールをデザインするという活動を通して、また新たな都市像をつかんでいきます。

 

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