「新しい演劇のつくり方」第4回
演出家の視点を捉える
演劇集団「範宙遊泳」代表、劇作家で演出家の山本卓卓さんと13名の10代の生徒のみなさんが、山本さんの代表作『うまれてないからまだしねない』の世界観をベースとした新たな演劇の制作・上演を目指す「新しい演劇のつくり方」。1月9日は第四回授業を開講しました。
これまで脚本と演技の基本を学んできた生徒の皆さん。今回は新たに演出の基礎を身につけるため、ディスカッションを交えながらの「演出とはなにか?」というテーマの講義とワークショップに挑戦。2月の本番に向け、演劇創作に欠かせない演出家の視点を捉えていきます。
演出を通じてイメージを作品にしていく
「演出の仕事ってなんだろう?」。前半の講義は山本さんから問いを投げかけるなど、対話の中で進んでいきます。生徒の皆さんがイメージする演出家像を発表したり、山本さん自身の演出家としての経験談や俳優たちから聞いた「こんな演出家と一緒に演劇したい!」というエピソードを紹介したり。ディスカッションを通してそれぞれの演出家像を拡げつつ、脚本を読み解くこと、脚本に書いてない要素を可視化すること、俳優やスタッフを率いることなど、演出家が果たす多様な役割を捉えていきます。
後半のワークショップは、生徒の皆さんの課題をつなぎ合わせた仮脚本の読み合わせ。声にして読み上げることで本番のイメージをより細かく掴んでいきます。読み終えた後は、それぞれが感じた違和感を大切にしあいながら再びディスカッション。「一つの物語としての繋がりが見えないな」、「全てのシーンを使わなくてもいいかも」、「じゃあ脚本に出てくる別々の公園を一つに統一してみる?」など、脚本を深く読み解くことで、作品としてのあり方を考えて決めていきます。そして、それこそが演出家の役割の一つであることも学んでいきます。
群像劇をつくりあげることの意味を繰り返し確認
「演出家は共演者やスタッフ、そして観客との関係性を築いていく必要があります。それは前回の授業で触れた俳優も同様。だから演劇は人間関係そのものを学ぶことができる。演劇をより良いものにしていくことは、自分自身が人間としてより良く生きるための学びにも繋がると思うんです」最後に山本さんからはこんなコメントが。改めてこの授業で演劇を学ぶ意味を振り返ります。
だからこそ「例えばアイデアが100個あっても98個は活かしきれない。本当に限られた数のアイデアだけがやっと活かせるのがクリエーション。だから一喜一憂せずに出しまくっていっていきましょう!」と、一緒に演劇をつくる生徒のみなさんがフルスイングできるためのムードも大切にされているようです。
見えてきた作品の全貌を練り上げていく
脚本、演技、演出という3つの要素に着目し、演劇制作の全貌を捉えてきたこれまでの授業。2月の作品発表まで、あと残すところ2回の授業となりました。それぞれのクリエーションに集中できるように、次回からはそれぞれの興味に沿って、「脚本」か「演出・演技」の役割を選んで創作を進め、脚本と演出を仕上げる予定です。