REPORT

「東京芸術中学」第60回 菅付雅信さん


デザインと社会の関係性を紐解く
編集者・菅付雅信さんと15人の世界的クリエイターによる『東京芸術中学』。1月8日は菅付さん自身が講師を務める「デザインの編集」シリーズの講義を行いました。

フォントデザイナーから陶芸家や建築家まで、様々な分野のデザイナーのインタビュー映像を参考にしながら講義を進めていった今回。「デザイナーはデザインを完成させた先にどんな社会を描いていたのか?」そんな問いを立てながら、クリエイターとしての彼らに着目していきます。




問題意識と解決策から生まれる新たなデザイン
今回の講義テーマは「小さなデザインと大きなデザイン」。世界的に利用されているフォント「ヘルベチカ」に魅了された数多くのフォントデザイナーから、史上初めて高層住宅をデザインした建築家のル・コルビュジエ、地球全体や宇宙を舞台に様々なプロダクトデザインを手がけたバックミンスター・フラーまで。様々なスケールや対象を持つデザインのあり方をみていきます。

そんなデザイナーたちに共通するのは、「それぞれが活躍している分野は独学であること。そして、デザインの背景にデザイナー自身が抱える問題意識とその解決策が反映されるていること」と菅付さん。

例えば、元海軍のバックミンスター・フラーは街を丸々覆うことができるほど大きく丈夫なドーム「ジオテックドーム」を独学で開発したそう。彼は環境問題の視点から大量の木材などを要する従来の家づくりを問題視し、「Do more with Less(少ない材料でより大きな構造をつくる)」というデザイン手法を開発。現在そのドームは世界中で20万個以上建てられていると言います。このような具体例を通して、デザイナーたちがデザインを生み出すプロセスとその構想が実現していく様子を捉えていきます。


山は変えても高さは変えない
「講義に登場したデザイナーたちはみんな社会的と言っていいほど大きなテーマを自分に課しています。だからこそ生徒の皆さんにも常に大きなテーマ、高い山を目指して登ってほしいんです。でもその山自体はしょっちゅう変わっても大丈夫。大切なことは、目指す山そのものを変えても山の高さを下げないこと。そして、そこに向けて自分を高めていくことです」。講義の最後には菅付さんからこんなエールが贈られました。


次回はGAKUを飛び出し、デザインの現場を体験します
次回の芸中はそんなデザインについての特別授業。GAKUを出て、無印良品やトヨタ自動車の広告などを手がける「日本デザインセンター」の見学会を行います。ゲスト講師には、アートディレクターを務める色部義昭さんをお迎え。実際にデザインの現場で活動する色部さんにとってデザインと社会はどのような関係性なのか、これまで菅付さんが講師を務めた「デザインの編集」シリーズで学んできたことを裏付けしていくような授業となりそうです。

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