REPORT

「新しい演劇のつくり方(第2期)」 第16回 上演


戯曲を書き、演出し、演じてきた7ヶ月の集大成
「新しい演劇のつくり方」は昨年度に続いて開講となる演劇のクラス。今年度は演劇カンパニー「チェルフィッチュ」を主宰し、このクラスの総合ディレクターを務める岡田利規さんによる『三月の5日間』を原作とし、中高生である生徒の皆さんが新たな演劇作品を戯曲からつくっていきます。

7月23日(日)、最終回となる今回はついに作品上演。GAKUを舞台に、これまで約7ヶ月をかけて、生徒の皆さんが書き、演出し、演じてきた、新たな作品『渋谷/もしくは/私/たち/は/何も知らない』を上演していきます。




本番を迎える時にしか味わえないもの
授業の時間以外にも、何度も自主的にGAKUに集まり練習を重ねてきた皆さん。上演会当日も朝早くから集まりリハーサルを繰り返し、照明や効果音を含めた演出を細かく確認。さらには本番直前の土壇場でも、柔軟に演出方法に変更を加えて最善を尽くしていきます。

どこか緊張感も漂う中でも、「いよいよ上演ができる!」と本番を迎える喜びを噛み締めている様子の生徒の皆さん。山田さんから「みんなで円陣を組もう!」という声がけで、岡田さん、笠木さんとも一緒に円になると、不思議と本番の時間を迎えようとする心持ちが揃っていきます。








『渋谷/もしくは/私/たち/は/何も知らない』
オンラインでの観劇も含めて、演劇関係者の方々、昨年度の第1期受講生の皆さん、保護者の方々が立ち合ってくださるなか、15名の生徒と3名の講師でつくりあげてきた作品をついに上演。冒頭にこの作品の成り立ちをご紹介し、開演しました。





上演直後の想いを言葉にする
約1時間の上演を終え、拍手と熱気に包まれた生徒の皆さん。岡田さん、笠木さん、山田さんと肩を並べて語らうアフタートークでの清々しい表情がとても印象的。観客の皆さんからも暖かな感想が贈られつつ、このクラスのファシリテーターを務める演劇ジャーナリストの徳永京子さんからは「このクラスが始まる前と今、ご自身と演劇との『距離感』に変化はありました?」と質問が寄せられます。

「演劇を一部の人の娯楽として捉えていた。でもそれって違うのかもしれない。生きてく中で伝えたいこと、だけど伝わらずに終わってしまったことがあって、ここはそれを伝えられる場所だった。人が生きていくために演劇が存在しているような気がした」

「戯曲を書いてた時は『自分だけのカタルシスでつまらない』と思っていた。だけどクラスのみんなに伝わって、さらに多くの人に伝えることができた。自分の言葉は自分だけの言葉じゃないと思えたし、演劇が自分にとってさらに大切なものになった」

「自分の書いたものが今日伝わって本当に救われたと思った。それがすごい嬉しかったし、また書きたいと思った」

「演劇部でつくる作品は大会で上位に上がっていくための作品だった。でもこのクラスでつくる作品は違った。色々思い直したし、これからは僕の思う『良い演劇のつくり方』を実践していこうと思った」

「自分が自分に近づけた。クラスを通してこれまで気づいていなかった自分の気持ちを自覚できた」

なかには、「良いことを言わないといけないという今の状況が苦しい」といった素直なコメントも上がり、集団創作のための場がどのようなものであるべきかという議論に発展していくシーンもみられました。上演された作品のみならず、あらゆる角度から議論を繰り返してきたクラスならではのアフタートークからも、このクラスの特徴や雰囲気をありありと感じます。これまでの7ヶ月を通して、演劇、自分、他者、それぞれに向き合い続けてきた生徒の皆さん。アフタートークで語られた変化の数々は、全員で戯曲を書き、演出し、演じ、発表してきた「新しい演劇のつくり方」だからこそのように感じました。


「新しい演劇のつくり方」の演劇は続く
「やって良かった」「終わってほしくない」「みんなと出会えてよかった」と、授業終了後も口々に語られた最終回。生徒の皆さんの中からは「みんなで新しい劇団つくっちゃう?」という提案も。GAKUとしてもクラスから新しい活動が派生的に生まれていくということはこの上ない喜びです。積極的に応援をしていきたいと考えています。もちろんGAKUでも、演劇のクラスや観劇プログラムは継続する予定です。これからのGAKUの活動にも引き続きご期待ください。

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