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「新しい演劇のつくり方(第2期)」 第10回 演出・演技(舞台美術)


どのような空間で上演すべきかを考える
「新しい演劇のつくり方」は昨年度に続いて開講となる演劇のクラス。今年度は演劇カンパニー「チェルフィッチュ」を主宰し、このクラスの総合ディレクターを務める岡田利規さんによる『三月の5日間』を原作とし、中高生である生徒の皆さんが新たな演劇作品を戯曲からつくっていきます。

4月30日(日)の第10回授業では、講師の山田さん、総合ディレクターの岡田さんと共に、作品の舞台美術案としての空間演出を検討していきます。




作品と観客の関係を考える
上演会場となるのはGAKUの教室。そこには様々な形や色の机や椅子、そのほかの様々な什器があります。それらを見立てることで舞台美術を構成していく今回。生徒の皆さんは、実際に什器を動かしながらシーンごとの空間のあり方を検討します。戯曲をつくり、演出も演技も舞台美術も体験していくこのクラス。什器を生徒みんなで話し合いながらセットした後には、確かめるように、佇んだり、歩いたり、セリフを読んでみたりと、多様な観点からの検討が自然と生まれていく様子が印象的でした。

「観客に渋谷の雑踏を感じてもらうにはどうしたらいいだろう?」「私たちがただ鑑賞される側ではいたくないよね。観客にもっと作品に没入して欲しい」。作品の舞台となる渋谷の空間をどう表すか。舞台と客席の境界線、俳優と観客の関係はどうあるべきか。演じるための空間を具体的につくっていくことで、様々な論点が浮き彫りになっていきます。



集団創作のための議論の方法を考える
「作品と観客との関係性。みんなが言う、その『近さ』だったり、『境界線がない』ということ。それを叶えるためには、いろんな方法があるはず。物理的な近さではない、様々な近さについて考えてみよう」と山田さん。「今みんなが話しているのは、舞台美術の話ではなく演劇そのものの話。舞台美術だけで観客との関係が決まるわけではない。これから実際に演じてみて、観客とどのように繋がっていけるか、より鮮明にイメージが湧いてくるはずです」と岡田さん。

議論は活発になり、生徒それぞれのこだわりたいポイントも明らかになっていきます。何が譲れて、何が譲れないのか。それは目的の話なのか、手段の話なのか。議論が熱を帯びるほどに、山田さんが前回の授業で投げかけていた「交通整理」という営みの大切さが身に染みていきます。


次回から稽古がスタート
戯曲づくり、演出、演技、舞台美術と、演劇作品制作の様々な面を体験していくこのクラス。授業を重ねるほどに、作品がより具体的に完成に近づいていく感覚を得ていきますが、だからこそ、気になるところやこだわりたいところも同時に明確になっていき、議論は尽きません。終わらない議論も大切にしていきながら、暫定的にでも方針を定めながらアイディアを体感し集団創作のプロセスを経ていきます。次回の授業からは、配役と舞台美術案を仮決定して本格的な稽古がスタート。完成したものを稽古するのではなく、稽古をしながら作品を磨いていく。そうやって、「新しい演劇のつくり方」は進んでいきます。

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