REPORT

「CO-CURATING」第1回 ガイダンス

企画展を制作することを通してキュレーションの可能性を探っていく
「CO-CURATING」はキュレーターの髙木遊さんと岩田智哉さんによる、キュレーションをテーマとしたクラス。アーティストの方々とも交流を重ねながら、全11回の授業を通して生徒全員で企画展を作り上げていきます。4月23日の初回授業では、講師のお二人の活動を通して「キュレーター」という仕事のあり方を紐解いていきました。

 

キュレーターという存在の可能性
授業のはじめには、お二人の実際の活動をご紹介いただきながら、キュレーターという存在の可能性に迫っていきました。

例えば、講師のお二人が運営をするオルタナティブスペース・The 5th Floorで開催された、岩田さんによるキュレーション展「between / of」。個の流動的なあり方に「水」というモチーフを重ねてテーマとしたこの企画展では、写真や映像、音や光、香りなど様々なメディアを扱う国内外の5名のアーティストの作品が展示されています。「展覧会のあり方をとことん考え抜くことがキュレーターの役割。当たり前ですが、展示のコンセプトやアーティストの作品をわかってもらうために、ただ作品を置いているわけではありません。作品を見せる順番や空間の導線が少し変わるだけで、鑑賞体験そのものが大きく変わってしまうんです」と、展示を作り上げていくプロセスやキュレーションにおける創意工夫のあり方が語られます。

例えば、静岡県熱海市のリゾートホテル「ニューアカオ」の全館を使った髙木さんによるキュレーション展「四肢の向かう先 | Standing Ovation」。髙木さんは今回の展示を作り上げるにあたり、「ニューアカオ」の成り立ちやその周辺の環境のリサーチを経て、通常の美術館の枠組みに囚われない展示のあり方を一から考えていったのだそう。展示空間の3DCGを使って実際の展示の様子を紹介しながら、「自分の好きなアーティストの隣で並走できること、作品を通して新しい世界に触れることがとにかく楽しい」と、キュレーターのモチベーションの在処も語られます。

 

それぞれの鑑賞視点を交わし合いながら交流会
「キュレーションとはなんなのか。『キュレーター』と名乗っている僕たちでも、まだまだ掴みきれていないと思っています。だからこの半年間でみんなと企画展を作り上げることを通して、その可能性を一緒に探っていきたい。そういう想いで、このクラスのタイトルも『CO-CURATING』にしました」という高木さんたち。だからこそ、「生徒の皆さんとのコミュニケーションや生徒同士の交流にも時間をしっかり確保していきたい」と言います。そこで授業の後半では、自己紹介も兼ねて、生徒の皆さんそれぞれが印象に残っている企画展について紹介し合う時間が設けられました。

「東京都美術館で開催していたエゴン・シーレ展。その当時には告知物として街に掲示されていたポスターが、現在は美術館で絵画と一緒に並んでいる。ものの価値が時代を経て変化していくことを改めて感じられて面白かった」「SCAI PIRAMIDEで開催していた赤瀬川原平の写真展。1人の作家の作品が複数の人によってキュレーションされて展示が作られているという構成が新鮮だった。展示会場の六本木も作家のゆかりのある場所。これは意図してやっているのかな?」など、生徒の皆さんそれぞれの切り口から、実際に訪れた企画展での体験や感想が語られます。関心どころによって、訪れる企画展も着眼点も様々。その違いにみんなで盛り上がりつつ、「作品とともに空間も含めてこの展示が魅力的だと感じたのかもしれない」「そもそも何をもって現代美術と言うのだろう?」と問いが広がっていき、これから企画展を作り上げるキーワードとなるようなディスカッションにも発展していきました。

 

次回は、実際の企画展に訪れての課外授業
授業の終わりには、今後の授業に向けた教科書として、お二人が運営をするオルタナティブスペース・The 5th Floorの1周年に伴ったアニュアル・ブック「2020±1」が生徒一人ひとりに贈呈されました。次回の授業は、実際の企画展に訪れての課外授業。「全部表現になるし、全部キュレーションできる。自分で制限を設けずに、自由に観て、考えていこう!」という高木さんの言葉を受けて、改めて企画展を自由に捉えていく機会となりそうです。

 

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