「新しい演劇のつくり方(第2期)」 第5回 戯曲づくり(フィールドワーク)
戯曲の舞台を体感することで戯曲を深める
「新しい演劇のつくり方」は昨年度に続いて開講となる演劇のクラス。今年度は演劇カンパニー「チェルフィッチュ」を主宰し、このクラスの総合ディレクターを務める岡田利規さんによる『三月の5日間』を原作とし、中高生である生徒の皆さんが新たな演劇作品を戯曲からつくっていきます。
2月19日(日)、第5回授業の今回は、講師の笠木さんと共に、原作の舞台となる渋谷の街をフィールドワークをし追体験することで、戯曲づくりに活かしていきます。
『三月の5日間』と渋谷をもう一度捉える
笠木さんが自ら制作された2023年と2003年の地図を手にとって、過去の渋谷や『三月の5日間』のシーンを頭の中に思い浮かべながら、現在の渋谷を歩いていきます。
ミノべくんが5日間を過ごした円山町エリアの付近、今はもうない北陸銀行跡地、センター街など。「通りが一つ違うだけでも、雰囲気が全然違うよね」と笠木さんが言うように、現在の街も一つの戯曲のように読み解いていきます。「渋谷ってこんなに人が多かったけ?」「あれだけたくさんあったタピオカ屋さんってもうなくなった?」「これだけ人がいたらぶつかっちゃうのもしょうがないよね」「ビルのあんな高いところに落書きがある!」「電柱にたくさんシールが貼ってあるけどなんのシールなんだろう」「ゴミの匂いきついね」「やっぱり渋谷は落ち着かないな」と、過去の渋谷の街の様子を思い浮かべながらも、現在の街の様子に対しても自然と感想がこぼれていきます。
「今」が生み出す演劇の新しさ
フィールドワークから帰ってきて、グループでのディスカッション。「渋谷の街をきっとずっと、概念として捉えていた。ちゃんと見ると色々とある。見ているようで、これまでちゃんと見ていなかったのかもしれない」という声が上がるように、普段何気なく歩いている渋谷の街も、戯曲や過去の様子を重ねて見ることで、むしろかえって現在の様子が際立って感じられたようでした。
「新しい演劇の『新しい』ということにこだわりすぎていた。私たちが今感じていることをそのまま書けば、それがそのまま『新しい』になるのではないか。私たちの言葉でどう表現していくかをテーマにしていきたい」と、これまで戯曲を書きあぐねていた気持ちが少し楽になっている様子が印象的でした。笠木さんも、「自分達の『今感じていること』『今の渋谷』についても書いてみましょう。戯曲を書く上で一番大切なことは『今どう思うか』『これからどう生きるか』をどのような表現で反映させるかだと私は思います」と応じることで、生徒の皆さんが少なからず感じていた腑に落ちなさが晴れていくような時間でした。
次回は戯曲を書き進めて、持ち寄る
戯曲を書き進めるための一つの大切な軸を共有することができた今回の授業。これから次回授業まで各グループで戯曲を書き進めていきます。原作を下地に生徒のみなさんの『今感じていること』『今の渋谷』がどのような言葉で書かれていくのか、とても楽しみです。次回授業ではその進捗を報告し合い、戯曲づくりを進めていきます。