「新しい演劇のつくり方(第2期)」 第4回 戯曲づくり(案出し)
戯曲を書くための、「とっかかり」を重ねていく
「新しい演劇のつくり方」は昨年度に続いて開講となる演劇のクラス。今年度は演劇カンパニー「チェルフィッチュ」を主宰し、このクラスの総合ディレクターを務める岡田利規さんによる『三月の5日間』を原作とし、中高生である生徒の皆さんが新たな演劇作品を戯曲からつくっていきます。
2月5日(日)の第4回授業では、班に分かれての戯曲の執筆がスタート。これまでの授業で挙がった戯曲のアイデアを整理しつつ、それぞれの印象に残った「とっかかり」を重ねながら、具体的な戯曲案を考えていきます。
それぞれの大切にしたいことを、みんなで大切にするために
「とっかかり」とは、これから戯曲を生み出していく際にそれぞれが大切にしたいと思えるもの。この授業では、それぞれが大切にしたいと思えるものを見出すことと、それをみんなで大切にしていくためのプロセスを重要視しています。そのために、まずはグループに別れて、それぞれの「とっかかり」を探りながら共有していきます。
「劇場を出たら、いつもの街が全く別物に見える。そんな作品を自分もつくりたい」「役者の話すセリフがいつも嘘っぽく聞こえちゃう。だったらセリフのない演劇はどうだろう?」「ひとりぼっちのミッフィーちゃんに一番共感できたから、ミッフィーちゃんとミッフィーちゃんのイマジナリーフレンドの話を書いてみたい」「だらしないミノベくんは好きではないけど気になる存在。好きじゃないけど気になるという感覚を突き詰めたい」。これまでの授業を経ているからこそ、生徒それぞれが自身の感触をしっかりと言葉にしている様子が印象的です。
バラバラの個人が、バラバラのままに一緒につくる意味
言葉を重ねていくと、自ずと気になるところも深まっていきます。「新しい演劇をつくりたいけど、そもそも『新しい』ってなんだろう?」「みんなでつくるって、そもそも出来るのかな?」「自分の痕跡を残して、自分の作品だって思えるんだろうか?」と、議論も根本的なものになっていきます。
笠木さんは、ご自身も色々と悩んだり逡巡していることを素直にオープンにされつつ、「みんなでつくるという行為の意味を考えるのは本当に重要」と言います。そして「16人で一つの戯曲を書くこと、そのものが新しいことで挑戦的なこと。もちろん、みんなのアイディアをそのままピックアップすると違う方向性が出てくる。それは決して避けたい状況ではなく、むしろ歓迎すべきものであるはず。全員でやることは大変だけど、だからこそ新しい演劇ができるはずです」と、生徒の皆さんに向けて語られました。
相対することや、矛盾していると思うもの。それを無理に避けるわけではなく、じっくり、その違いに向き合っていくこと。それらの時間を大切にするということは、集団創作である演劇に特徴的なプロセスであるようにも感じました。
次回は渋谷の街をフィールドワーク
今回の授業を踏まえて、グループごとに授業以外の時間も活用し戯曲を書き進めていきます。次回授業では、戯曲づくりに弾みをつけていくためにも、『三月の5日間』の舞台となった渋谷の街を実際に歩くことで、原作をより体感していきます。