「(Non)Fictional Urbanism – まちの観察と実験 –」第5回〜第6回 計画とデザイン
新橋の街を舞台にした演習
港区・新橋エリアを舞台にして、リアルな都市空間や建築デザインを学んでいく「(Non)Fictional Urbanism – まちの観察と実験 –」。建築家の海法圭さん、津川恵理さん、建築リサーチャーの川勝真一さんからなる「Town Play Studies」と、変わりつつあるまちの「観察」と理想の都市のあり方の「実験」を通して、これからの都市や街のあり方を考えていきます。
そこに存在する「モノ」のあり方。人の振る舞い。空間的な隙間や余白。音や匂いといった目に見えない現象。街を形作る様々な要素に着目して観察することから、都市像を捉えていった前半4回の授業。 今回からは、新橋の街を舞台にした演習型の授業を進めていきます。テーマは「Fictional Urbanism」。これまでの観察を踏まえ、「あり得そうな未来」と「あり得ないけどできたら良い未来」の両面について考えながら、新橋の街のあるべき姿を構想していきます。
11月4日(土)は、第5回と第6回の連続授業。演習の初日となる今回は、新橋の街をフィールドワークし、この街のこの場所がこうなったらいいな?という妄想を膨らませながら、それを実際の地図へ書き込んでいきます。
多面的な都市の姿を体感する
これまでは平日夕方に授業を開講してきたこのクラス。土曜の昼間の時間帯に新橋の街を訪れるのは授業の中では今回が初めて。フィクショナルな想像力を働かせながら街を歩くと、更にこのエリアが新鮮に感じられていきます。「駅前のSL広場では、政党演説の隣で将棋大会?!一見意外なもの同士が当たり前のように居合わせている。この街の特徴を表しているかもしれない」「『働く人の街』という印象が強かったけど、ニュー新橋ビルの中に入ってみると趣味を楽しむような場所も意外とたくさんあって、なんだか別の街に来たようだ」と、これまで見えなかった街の姿も浮かび上がっていくようでした。
「リアルをどのように良くしていくか?」をフィクショナルに考える
フィールドワークを踏まえながら「こうだったらいいな」と思う街の姿を想像し、自分の思うままに地図へ書き込みます。妄想とも言えるアイデアの点が増えていき、地図上の街を覆っていきます。
「新橋駅から伸びている長い道路を直線ではなくうねうねにして、街を歩くことや自転車に乗ることが楽しくなるようにしたら、そこで暮らす人や働く人がもっとイキイキと過ごせる街になるんじゃないか」「仕事の息抜きにスポーツができる場所をつくりたいな。広々とした空間を作れるようにビルの屋上を活用してグラウンドを作ったり、地下空間を作って丸ごとゴルフ場にするのはどうだろう」「居酒屋の前の道に椅子や机が出ているけど、そのお店で飲食をしないと座れない。お酒を飲まない人やちょっと休憩したい人も自由に座れるベンチがあったらいいな。さらに食べれる草を植えて、小腹も満たせる道になったらいいな。そういう道では通り過ぎるだけではない何かが起こりそう」と生徒の皆さん。語られるアイデアそのものは空想的でありながらも、その出発点となるのは、実際の街に対するそれぞれの実感の伴った感覚や想い。だからこそ、「その気持ちわかる!」「楽しそう、やってみたい!」とみんなで盛り上がります。
「ありそうだけどまだない街の姿。その可能性を思い描いていくために『Fictional Urbanism』というテーマにしました。固定概念を取り払って、実現できるかできないかは置いておいて、まず自由に発想を広げていくこと。それは実際に街づくりの中でも大切にすべき視点です」と、川勝さん。最後には、次回以降も続いていく演習のテーマの意味を紐解いていくようなコメントで授業が締めくくられました。
次回は、「街のあるべき姿」を一枚の絵に表すことで想像する
それぞれが自由に発想したアイデアを実際の地図へ落とし込んでいくことで、街のあるべき姿を捉えていく手がかりを掴んでいった今回。次回の授業では、それをフォトコラージュで表現することを通して、自分の頭の中にある街の姿が実際の都市風景として立ち現れた時の様子を具体的に想像していきます。