「(Non)Fictional Urbanism – まちの観察と実験 –」第1回 モノの観察
観察と実験を通じて、これからの街を考える
港区・新橋エリアを舞台にして、リアルな都市空間や建築デザインを学んでいく「(Non)Fictional Urbanism – まちの観察と実験 –」。建築家の海法圭さん、津川恵理さん、建築リサーチャーの川勝真一さんからなる「Town Play Studies」と、変わりつつあるまちの「観察」と理想の都市のあり方の「実験」を通して、これからの都市や街のあり方を考えていきます。
9月7日(木)の第1回授業では、このクラスの舞台となる新橋駅の周辺のフィールドワークに挑戦し、街対する観察眼を磨いていきました。
構想力の重要性
「都市は人と社会を繋ぐために欠かせないもの。このクラスを通して、これからの都市のあり方をさらに面白くするアイデアをみんなで探っていきたいと思います」。と川勝さん。初回授業となる今回、まずは全11回の授業を通じたゴールが共有されます。
そのアイデアを豊かにイメージしていくために大切になってくるのは「ノンフィクション」と「フィクション」という視点。
都市と向き合うことでノンフィクションからフィクションを想像し、さらにはそれを実装することでフィクションを新たなノンフィクションに換えていく。その実例として紹介されたのは、建築家のル・コルビジェが1920年代に提唱した都市構想「輝く都市」。人口過密だった当時の都市の現状を捉え、高層ビルを建設し「オープンスペース」と呼ばれる空き地を生み出すことで、人々がより心地よく過ごせる都市を目指したそう。実際にこの都市構想は世界中に大きな影響を与え、高層ビルが立ち並ぶ今日の日本でもその影響は数多くみられます。
アーバニストとしての第一歩
「Town Play Studies」にとっての建築家像。それは、フィクションと言えるほどの豊かな構想力を持ちつつ、現実に働きかけるもの。そのような働きは、近年では「アーバニスト(都市での暮らしや文化に実際に介入し、その地の魅力を向上させていく人)」と呼ばれてもいるそう。まさに、このクラスでは生徒の皆さんも1人のアーバニストとして新橋の街づくりに参加します。その手段となるのが、自らの身体と視点で都市のノンフィクションを捉える「観察」と、都市のフィクションを擬似的に実践する「実験」。
初回となる今回は、新橋駅周辺の「モノ」を観察し、街中で気になるものや魅力を感じるものの写真を10枚撮り、そこにタイトルをつけることを通して、その街の特徴を明らかにしていきます。
例えば、居酒屋のダンボールを重ねただけの机、瓶ビールケースを並べただけの椅子などの写真群は「新橋的アップサイクル」。看板、街灯、夕焼けなどのいろいろな光が写される写真群は「都市の憩い」。派手な色づかいや眩しすぎる大量の広告を移した写真群は「過剰広告」。駐輪された自転車やビルの窓の集合と配置から感じる「不規則なもの」。1時間以上歩きながらの観察を通して、現在の新橋らしさを捉えつつ、同時に自分だけの着眼点のありかも掴んでいきます。
街を観察するために必要な様々な視点
「都市は全てノンフィクション。街を知ってリアルを知ることからフィクションに発展させていきましょう」と津川さん。「なぜ新橋にこんな特徴があるのか。その背景にはきっと『人』という要素も大きく関わっているはずです」と海法さん。次回授業に向けてのテーマも紹介されました。
次は、人のふるまいに注目
「観察」の重要性をワークショップを通じて体験して行った今回。次回は、人の振る舞いに注目することを通して、その街の特徴を浮かび上がらせていくことに挑戦します。